神経痛

体に「ズキズキ」「ビリビリ」と走る鋭い痛み。もしかしたら、それは「神経痛」と呼ばれる体からのSOSサインかもしれません。神経痛は特定の病名ではなく、腰椎椎間板ヘルニアや帯状疱疹など、様々な原因によって引き起こされる症状の総称です。

中には、ケガがきっかけで自分の体を攻撃してしまう物質が作られ、痛みを引き起こすケースも。ある研究では、脊髄損傷の患者さんの約16%で、この物質が見つかったと報告されています。

この記事では、神経痛の代表的な種類から意外な原因、そして日々進歩する最新の治療法までを詳しく解説します。そのつらい痛みの正体を突き止め、改善への一歩を踏み出しましょう。

神経痛の概要

「神経痛」という言葉を聞いたことはありますか。 これは特定の病気の名前ではなく、症状を表す言葉です。 脳から手足のすみずみまで伸びる神経が刺激されることで、 「ズキズキ」「ビリビリ」といった痛みが起こる状態です。

神経痛は、痛みの原因がはっきりしているかどうかで、 大きく2つのタイプに分けられます。

種類

特徴

原因の例

症候性神経痛

原因となる病気が特定できるもの

腰椎椎間板ヘルニア、帯状疱疹など

特発性神経痛

検査をしても原因がはっきりしないもの

三叉神経痛や肋間神経痛の一部など

このように、神経痛とひとくくりに言っても、 その背景には様々な原因が隠れている可能性があります。 そのため、治療はまず原因を特定することが基本です。

治療法は日々進歩しており、新しい手術も研究されています。 例えば、けがなどで末梢神経が傷ついて起こる痛みを、 予防したり治療したりする手術(TMR、RPNI)などです。 これらの方法は、しつこい痛みを和らげる効果が期待されます。

神経痛の種類

神経痛は、痛む神経の場所によっていくつかの種類に分かれます。 痛みの特徴が違うため、代表的なものを知っておきましょう。 主に、以下の3つの神経痛がよく知られています。

種類

主に痛む場所

痛みの特徴

三叉神経痛

顔(ほっぺ、あご、歯ぐきなど)

・突然、電気が走るような鋭い痛みが続く

・洗顔や食事、歯みがきがきっかけで起こる

肋間神経痛

胸、背中、わき腹

・あばら骨に沿って、体の片側に起こる

・深呼吸やせき、体の動きで痛みが強まる

坐骨神経痛

お尻、太ももの裏、すね、足

・お尻から足にかけて、しびれや痛みが広がる

・腰の病気が原因で起こることが多い

三叉神経痛(さんさしんけいつう) 顔の感覚を脳に伝える神経に起こる、とても強い痛みです。 治療ではお薬を使いますが、最近の研究で良い報告があります。 従来のお薬よりも副作用が少なく、痛みを抑える効果が高い 可能性のあるお薬が注目されています。

肋間神経痛(ろっかんしんけいつう) 背骨から出て、あばら骨に沿って走る神経が痛む状態です。 「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」という病気の後に 症状が続くこともあります。

坐骨神経痛(ざこつしんけいつう) 腰から足に伸びる、体で最も太い神経が圧迫されて起こります。 治療法は手術をしない方法と手術があります。 手術をすると、短期的な痛みの改善に優れるとされます。 しかし、長い目で見ると効果は限定的という報告もあります。 あなたの症状や生活に合わせて治療法を選ぶことが大切です。

神経痛の原因

神経痛は、神経が何らかの原因で刺激されたり、 傷ついたりすることで起こる、体からのSOSサインです。 その原因は一つではなく、様々なものが考えられます。

考えられる主な原因をいくつか見ていきましょう。

  • 神経が押しつぶされる(圧迫) 骨や軟骨などが神経にぶつかり、圧迫されることで 痛みが起こります。
  • 腰椎椎間板ヘルニア 背骨のクッション(椎間板)の中身が飛び出し、 神経を直接圧迫します。20~40代にも多いです。
  • 脊柱管狭窄症 加齢などで背骨の神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、 神経が圧迫されます。高齢の方によく見られます。
  • 病気で神経が傷つく(ダメージ) 特定の病気が、神経そのものを傷つけてしまうことがあります。
  • 帯状疱疹後神経痛 水ぼうそうのウイルスが原因で起こる帯状疱疹の後、 ウイルスが神経を傷つけ、痛みが長く残る状態です。
  • 糖尿病 血糖値が高い状態が続くと、手足の細い神経が 傷つき、痛みやしびれを引き起こします。
  • ケガがきっかけで起こる特殊な状態 大きなケガが、体のシステムに変化を起こすことがあります。 例えば脊髄損傷のような大きなケガをすると、 体を守る免疫が勘違いをして、自分の神経を 攻撃してしまう「自己免疫」という状態が起こり得ます。 ある研究では、脊髄を損傷した患者さんの約16%で、 自分を攻撃する物質(自己抗体)が見つかりました。 これが、ケガが治った後も続く痛みの原因になるのです。
  • その他 体の冷えやストレス、長時間の同じ姿勢なども原因です。 筋肉が硬くなって血の流れが悪くなり、 神経に十分な酸素や栄養が届かなくなるためです。

このように神経痛の原因は多岐にわたります。 つらい痛みが続く場合は、自己判断せずご相談ください。

神経痛の症状

神経痛の症状は、痛む場所や痛み方で大きく異なります。 「どこが」「どのように」痛むかを知ることは、 原因を探るための、とても大切なヒントになります。

あなたの症状がどれに近いか、チェックしてみましょう。

症状の名前

主に痛む場所

どんな痛み?どんな時に痛む?

坐骨神経痛

お尻、太ももの裏、すね、足

・お尻から足へ、電気が走るような痛み

・しびれて感覚が鈍くなることもある

・長く座ったり、立ったりするのがつらい

肋間神経痛

背中、胸、わき腹

・あばら骨に沿って、急に鋭く痛む

・息を吸ったり、せきをしたりすると響く

・体をねじると痛みが強くなる

三叉神経痛

顔(ほっぺ、あご、歯ぐきなど)

・カミナリが落ちたような、とても強い痛み

・痛む時間は短いが、何度も繰り返す

・食事や歯みがき、洗顔で激痛が走る

これらの症状は、体からの大事なSOSサインです。 例えば、坐骨神経痛の原因として多いのが、 背骨のクッションが飛び出す「腰椎椎間板ヘルニア」です。

このような神経が原因の痛みに対しては、 世界中で様々な治療法の研究が進められています。 ある研究では、体を動かす運動や心を落ち着かせる方法が、 腰椎椎間板ヘルニアの痛みを和らげる可能性が示されました。

つらい痛みを我慢せず、まずは専門の医療機関に相談し、 痛みの原因を正しく知ることが治療の第一歩です。

神経痛の検査・診断

神経痛のつらい痛みを治すには、まず原因の特定が重要です。 原因によって治療法が全く違うため、正確な診断が回復への第一歩になります。 診断は主に、お話を聞く問診と、いくつかの検査を組み合わせて行われます。

1. 問診と身体診察 まず、あなたの症状について詳しくお話を聞かせていただきます。 痛みの原因を探る、とても大切な手がかりになります。

【問診でよくお聞きすること】

  • いつから痛むか 急に始まったのか、前から続いているのかなどを確認します。
  • 体のどこが痛むか 痛みの場所から、どの神経が関係しているか推測します。
  • どんな痛みか 「ピリピリ」「ズキズキ」など、痛みの種類は重要です。
  • どんな時に痛みが強くなるか 特定の動きや時間帯で痛むかをお聞きします。
  • 痛み以外の症状はあるか しびれや、力が入らないなどの症状も大切な情報です。

その後、体に触れたり、道具を使ったりして神経の状態を調べます。 ハンマーのような道具でひざを軽く叩き、反応を見る検査もその一つです。

2. 体の中をのぞく検査 問診などで原因の候補がしぼれたら、画像検査で体の中を詳しく見ます。 これで、神経が圧迫されている場所や原因を特定できることがあります。

検査の種類

この検査でわかること

レントゲン検査

骨の変形や骨折など、骨に異常がないかを確認します。

MRI検査

背骨のクッション(椎間板)が飛び出していないかなど、神経の圧迫状態をはっきり見ることができます。

CT検査

骨の状態を、より立体的に詳しく調べたい時に行います。

3. 特殊な原因を探る検査 大きなケガなどがきっかけで、特殊な状態が起こることもあります。 例えば、脊髄損傷の後、体を守る免疫が勘違いをして、 自分の神経を攻撃してしまう物質(自己抗体)が作られることがあるのです。

ある研究では、脊髄を損傷した患者さんの約16%で、 この自己抗体が見つかったと報告されました。 そして、この状態は治りにくい痛みの原因の一つと考えられています。 必要に応じて、血液検査などで全身の病気がないかも調べます。

これらの検査結果を総合的に見て、診断を確定し、治療へと進みます。

神経痛の治療

神経痛のつらい痛みを和らげるには、様々な方法があります。 原因や痛みの強さに合わせて、あなたに合った治療法を お医者さんと一緒に見つけていくことがとても大切です。

治療は主に、お薬、注射やリハビリ、手術に分けられます。 それぞれの方法を順番に見ていきましょう。

  • お薬での治療(薬物療法) まずは、お薬で痛みをコントロールするのが一般的です。 神経が過剰に興奮して騒いでいるのを落ち着かせたり、 痛みを和らげたりするお薬を使います。 例えば、顔に激しい痛みが走る三叉神経痛では、 ガバペンチンというお薬が使われることがあります。 ある研究では、これまでのお薬より副作用が少なく、 痛みを抑える効果が高い可能性が示されました。
  • ブロック注射・リハビリ 痛みがとても強い場合は、痛みの原因となっている 神経の近くに直接麻酔薬を注射する方法があります。 これは「神経ブロック注射」と呼ばれ、つらい痛みを 直接抑える効果が期待できます。 また、帯状疱疹が治った後に残る痛みには、 この注射と鍼(はり)治療を組み合わせることで、 痛みだけでなく睡眠の質も改善したという報告もあります。
  • 手術での治療 お薬や注射を続けても痛みが良くならない場合に、 手術が選択肢になることがあります。 例えば、坐骨神経痛の原因が背骨にある場合、 手術をすると短期的に痛みが楽になることが多いです。 しかし、長い目で見るとその効果は弱まる可能性も 報告されており、慎重に考える必要があります。 また、ケガなどで神経が傷ついた後の特殊な痛みには、 新しい手術(TMR、RPNI)も研究されています。

どの治療法を選ぶかは、あなたの症状や生活によって異なります。 痛みを我慢せず、まずは専門の医療機関にご相談ください。