真菌性髄膜炎

長引く頭痛や微熱、「ただの風邪だろう」と自己判断していませんか?その症状は、身近な土や鳥のフンに潜む「カビ」が原因で起こる真菌性髄膜炎かもしれません。免疫力が低下していると発症しやすく、アフリカではエイズ患者の死因の20〜25%を占めるという深刻なデータもある、決して他人事ではない病気です。

症状がゆっくり進行するため発見が遅れやすく、脳に液体がたまる「水頭症」を合併すると事態はさらに深刻化します。たまった液体を排出するための手術は失敗も多く、何度も再手術を繰り返す過酷な治療となることも少なくありません。

この記事では、真菌性髄膜炎の知られざる原因から症状、そして最終手段として検討される特殊な手術まで詳しく解説します。大切な命を守るための知識を、ぜひここで得てください。

真菌性髄膜炎の概要

真菌性髄膜炎(しんきんせいずいまくえん)とは、カビの仲間である「真菌」が原因で起こる病気です。脳と脊髄(せきずい)という、体を動かすための大切な神経を守る「髄膜(ずいまく)」に感染が広がります。

この病気はインフルエンザのように、人から人へとうつることはありません。土の中や鳥のフンなどに含まれる真菌の胞子(ほうし)を、知らずに吸い込んでしまうことが感染の原因です。

健康な人がこの病気になることは非常にまれです。エイズ(AIDS)やがんの治療などで、体の抵抗力(免疫力)が弱っている方がかかりやすいことが知られています。

細菌が原因の髄膜炎と比べると、症状がゆっくりと現れるのが大きな特徴です。数週間にわたって微熱や頭痛が続くなど、風邪のような症状からはじまることも少なくありません。

この病気が慢性化すると、脳の中に脳脊髄液(のうせきずいえき)という液体がたまりすぎる「水頭症(すいとうしょう)」という状態になることがあります。たまった液体が脳を圧迫し、さまざまな神経の症状を引き起こします。

水頭症の治療では、たまった液体をお腹などに流すための管(くだ)を体に埋め込む「シャント術」という手術が行われます。しかし、このシャント術は失敗してしまい、再手術が必要になることも珍しくありません。

お腹へのシャント術が難しい場合には、最終的な選択肢として、胆嚢(たんのう)へ液体を流す方法が検討されることもあります。胆嚢は1日に1500ccもの液体を吸収する力があり、脳脊髄液を十分に処理できるためです。

真菌性髄膜炎の種類

真菌性髄膜炎は、原因となるカビ(真菌)の種類によって、いくつかのタイプに分けられます。どの真菌に感染したかによって症状の現れ方や治療法が変わるため、種類を知ることはとても大切です。

最も代表的なものが「クリプトコッカス性髄膜炎」です。これは体の抵抗力(免疫力)が弱っている方が特にかかりやすいことで知られています。アフリカではエイズ(AIDS)患者さんの死因の20〜25%を占めるという報告もあり、注意が必要です。

抗真菌薬というお薬で治療しますが、治療をしないと命を落とす危険性があります。また、一度良くなったように見えても、再び症状が現れる(再発する)ことも珍しくありません。

その他にも、原因となる真菌にはさまざまな種類が存在します。

  • コクシジオイデス菌 アメリカなどの乾燥した地域の土の中にひそんでいます。
  • ヒストプラズマ菌 鳥やコウモリのフンで汚染された土壌に多く含まれます。
  • ブラストミセス菌 湿った土や、腐った木の中に生息しています。
  • カンジダ菌 もともと人の体にもいる菌ですが、免疫力が落ちると病気の原因になります。

症状が数週間以上と長く続く場合、「慢性真菌性髄膜炎」と呼ばれることもあります。この状態になると、脳に水がたまる「水頭症」という合併症を起こしやすくなります。水頭症の手術は難しく、何度も再手術が必要になるなど、患者さんの負担が大きくなることも少なくありません。

真菌性髄膜炎の原因

真菌性髄膜炎は、カビの仲間である「真菌」が原因で起こる病気です。この真菌は、私たちのすぐそばの自然環境の中にひそんでいます。

具体的には、以下のような場所に多く存在しています。

  • 土の中
  • 腐って湿った木
  • 鳥やコウモリのフンで汚れた土

これらの場所にある、目に見えないほど小さな真菌の粒(胞子)を吸い込むことが感染のきっかけです。ただし、風邪やインフルエンザのように、人から人にうつる心配はありません。

健康な人が真菌を吸い込んでも、病気になることは非常にまれです。体の抵抗力である「免疫力」が、真菌が増えるのを防いでくれるためです。

しかし、持病や治療薬の影響で免疫力が弱っている方は注意が必要です。特にエイズ(AIDS)の患者さんでは重症化しやすく、アフリカではエイズ患者さんの死因の20〜25%を占めるという報告もあります。

原因となる真菌には、いくつかの種類があります。

真菌の種類

主な特徴とひそむ場所

クリプトコッカス

最も一般的な原因菌です。鳥のフンなどで汚染された土壌にいます。

ヒストプラズマ

鳥やコウモリのフンに含まれる土の中に多くひそんでいます。

コクシジオイデス

アメリカ南西部など、乾燥した地域の土ぼこりの中にいます。

カンジダ

もともと人の体にもいる菌ですが、免疫力が落ちると病気の原因になることがあります。

感染が長く続くと「慢性真菌性髄膜炎」となり、治療が難しくなることがあります。脳に水がたまる水頭症という合併症を起こすと、何度も手術が必要になるなど、患者さんの負担が大きくなることも少なくありません。

真菌性髄膜炎の症状

真菌性髄膜炎の症状は、カビがゆっくりと増殖するように、時間をかけて現れるのが大きな特徴です。そのため、風邪や疲れと勘違いしてしまい、発見が遅れることもあるため注意が必要です。

症状の現れ方は人それぞれですが、以下のような症状が数週間かけて少しずつ悪化することがあります。

【初期にあらわれやすい症状】

  • 頭痛 ズキズキするような痛みが長期間にわたって続きます。だんだんと痛みが強くなる傾向があります。
  • 発熱 高熱が出ることは少なく、微熱が続くことが多いです。
  • 吐き気・嘔吐 頭痛がひどくなるにつれて、吐き気や嘔吐の症状が現れます。
  • 首の後ろの硬さ(項部硬直) 首が硬くなり、あごを胸につけようとしても、痛くて曲げられなくなります。

病気が進行すると、脳への影響が大きくなり、より深刻な症状が現れる可能性があります。

  • 光を異常にまぶしく感じる
  • 意識がもうろうとして、話が混乱する
  • 体がガクガクと震える、けいれん発作を起こす

特に注意が必要な合併症として、脳の中に液体(脳脊髄液)がたまってしまう「水頭症(すいとうしょう)」があります。たまった液体が脳を内側から圧迫し、頭痛や意識障害をさらに悪化させます。

この状態を改善するため、たまった液体をお腹などに逃がす管(くだ)を入れる「シャント術」という手術が行われます。しかし、このシャント術は失敗してしまい、何度も再手術が必要になることも珍しくありません。

真菌性髄膜炎の検査・診断

真菌性髄膜炎は症状がゆっくりと現れるため、診断が難しい病気です。頭痛や微熱が続くなど、いつもと違う症状があれば早めに受診しましょう。診断では、いくつかの検査を組み合わせて慎重に原因を突き止めます。

最も重要になるのが「腰椎穿刺(ようついせんし)」という検査です。背中に細い針を刺し、脳と脊髄(せきずい)を守っている液体「脳脊髄液」を少しだけ取り出します。この液体を詳しく調べることで、病気の正体を探ります。

【腰椎穿刺でわかること】

  • 真菌(カビ)の確認 脳脊髄液の中に、病気の原因である真菌がいるかを調べます。
  • 脳の中の圧力測定 脳の中の圧力が高すぎないかを確認します。圧が高い場合は、下げるための治療が必要です。
  • 炎症の度合い 液体に含まれる細胞の数やタンパク質の量から、炎症の強さを判断します。

その他、脳の状態を詳しく見るために画像検査も行います。

  • CT・MRI検査 脳の断面を撮影し、炎症や腫れがないかを確認します。脳に水がたまる「水頭症」という合併症の発見にも役立ちます。

水頭症の治療では、たまった液体を体の別の場所へ流すための管(くだ)を入れる「シャント術」という手術が必要です。しかし、このシャント術は失敗するリスクがあり、何度も再手術が必要になることも珍しくありません。

お腹や心臓など、一般的な場所へ管をつなげない場合は、「胆嚢(たんのう)」へつなぐ方法が最後の選択肢として考えられます。胆嚢は1日に1500ccもの液体を吸収する力があり、脳脊髄液を十分に処理できるため、有効な治療法となり得ます。

真菌性髄膜炎の治療

真菌性髄膜炎の治療は、原因のカビを退治することが基本です。治療は長期にわたることが多く、根気強く向き合う必要があります。治療の柱は大きく分けて3つです。

  1. 原因のカビをたたく「抗真菌薬」
  2. 頭痛などを和らげる「脳圧の管理」
  3. 合併症に対する「水頭症の手術」

抗真菌薬による治療

治療の中心となるのは、カビの増殖を抑える「抗真菌薬」です。点滴や飲み薬で、たくさんの量のお薬を長期間にわたって使います。

  • 主な薬剤 アムホテリシンBやフルシトシンといったお薬が中心となります。
  • 治療期間 数週間から数ヶ月、時にはそれ以上かかることもあります。
  • 治療場所 基本的には入院して、慎重に治療を進めていきます。

症状が良くなっても、カビが完全にいなくなったわけではありません。自己判断でお薬をやめると再発する危険があるため、医師の指示通りに治療を続けることが非常に重要です。

脳圧のコントロール

この病気では、脳の中の圧力(脳圧)が高くなることがよくあります。高い脳圧は、強い頭痛や意識がもうろうとする原因になるため、下げる処置が必要です。

そのために「腰椎穿刺(ようついせんし)」という処置を行います。背中から細い針を刺し、脳のまわりにある液体(脳脊髄液)を抜いて圧力を下げます。症状によっては、毎日この処置を行って脳圧を管理することもあります。

水頭症とその手術

脳脊髄液の流れが悪くなり、脳の中に液体がたまる「水頭症」という合併症が起こることがあります。この場合、「シャント術」という手術を検討します。

シャント術は、たまった液体をお腹の中などへ流すための細い管(くだ)を体内に埋め込む手術です。しかし、この管は詰まるなどのトラブルが起こりやすく、再手術が何度も必要になることも少なくありません。

お腹へのシャント術が難しい場合の最終手段として、脳脊髄液を「胆嚢(たんのう)」という臓器へ流す、特殊なシャント術が行われることがあります。胆嚢は1日に1500ccもの液体を吸収する力があり、脳脊髄液を十分に処理できるため、有効な選択肢となり得るのです。