白癬

「水虫」という言葉に、きっと心当たりのある方は多いのではないでしょうか。実はその正体、「白癬(はくせん)」というカビの仲間が皮膚に感染する病気なのです。

高温多湿な日本では非常に身近な存在であり、足だけでなく、爪、頭皮、股、体にも広がることをご存じでしょうか。世界的に見ても、ブラジルでは実に4人に1人が感染している可能性があり、時には症状がないため、気づかないうちに家族や周りに広がることも。

まさか自分が、と思うかもしれませんが、誰にでも感染の可能性があります。この記事では、あなたの身近に潜む白癬の驚くべき実態と、早期発見・適切な対処の重要性について詳しく解説します。

白癬の概要

「白癬(はくせん)」という言葉を聞くと、あまり聞きなれないかもしれません。 しかし、きっと皆さんの身近にある「水虫」の正体と言えば、ピンとくるのではないでしょうか。 白癬は、実は「白癬菌(はくせんきん)」というカビの仲間が皮膚に感染して起こる病気です。 高温多湿な日本の気候は、この白癬菌が増えやすい環境と言えます。 つまり、私たちにとって非常に身近な感染症の一つなのです。

白癬菌は、足の裏や指の間に感染すると、一般的に「水虫」と呼ばれます。 しかし、このカビは足だけにとどまらず、体の色々な場所に感染することがあります。 例えば、次のような場所にも白癬菌は潜んでいます。

  • 爪
  • 指の爪や足の爪に感染すると、「爪白癬(つめはくせん)」になります。
  • 頭皮
  • 髪の毛の生え際や頭全体に感染すると、「頭部白癬(しらくも)」と呼ばれます。
  • 股(また)
  • 股のあたりに感染すると、「股部白癬(いんきんたむし)」になります。
  • 体
  • その他の体の部分に感染すると、「体部白癬(ぜにたむし)」と呼ばれます。

世界的に見ても、多くの方が白癬に悩んでいることをご存じでしょうか。 例えば、南米のブラジルという国全体では、およそ4人に1人、実に25%もの人が白癬に感染している可能性があると報告されています。 特に、足にできる白癬(足白癬)と、爪にできる白癬(爪白癬)がよく見られることが分かっています。 これは、白癬がいかに世界中で一般的な皮膚の病気であるかを示しています。

白癬菌は、感染している人の皮膚から落ちるフケや垢と一緒に広がります。 そして、それを踏んだり触ったりすることで、人から人へと感染してしまうのです。 家族の間や、お風呂屋さん、プール、ジムなどの公共施設でも、知らず知らずのうちに感染が広がることが少なくありません。 時には、かゆみなどの症状がほとんどないため、感染していることに気づかないケースもあります。 「まさか自分が」と思うかもしれませんが、誰にでも感染する可能性がある病気です。 そのため、早く見つけて適切な治療を始めることが、とても大切になります。

白癬の種類

白癬(はくせん)は、皮膚にカビの仲間がつく病気です。このカビが体のどこに感染するかによって、いろいろな呼び方や症状の出方が変わってきます。どのタイプの白癬も、早めに気づいて対処することが大切です。

ここでは、皆さんに特に知っておいてほしい代表的な白癬の種類についてお伝えします。

  • 足白癬(あしはくせん)
  • 一般的に「水虫(みずむし)」と呼ばれているものです。
  • 足の指の間や、足の裏、かかとなどにできます。
  • かゆみがあったり、小さな水ぶくれができたり、皮がむけたりします。
  • 特に夏場は蒸れやすく、足の裏が白くふやけたりすることがあります。
  • 爪白癬(つめはくせん)
  • 足の爪や手の爪に白癬菌が感染した状態です。
  • 爪の色が白っぽく濁ったり、黄色く変色したりします。
  • 爪が厚くなったり、もろくなってボロボロになったりします。
  • 爪白癬は痛みをほとんど感じません。
  • そのため、気づかないうちに病気が進んでしまうことも多いです。
  • 「まさか子どもが爪水虫に?」と思う方もいるかもしれません。
  • しかし、最近の研究では子どもの爪白癬も珍しくないことが分かっています。
  • 子どもの爪白癬の有病率は、0%から7.66%という報告もあります。
  • この有病率は、年齢が上がるにつれて増える傾向が見られます。
  • 子どもの爪白癬の症状は、大人の方とよく似た形で現れるのです。
  • 主に足の爪に感染しやすい種類のカビが原因となることが多いです。
  • 体部白癬(たいぶはくせん)
  • 腕や胸、お腹など、体の広い範囲の皮膚にできる白癬です。
  • 赤いリング状(ドーナツのような形)の発疹(ほっしん)が特徴的です。
  • 強いかゆみを伴うことが多く、思わず掻きむしってしまうこともあります。
  • 股部白癬(こぶはくせん)
  • 太ももの内側や股の周り、お尻などにできる白癬です。
  • こちらも強いかゆみと赤みが広がり、不快感が大きいのが特徴です。
  • 通気性の悪い環境で発症しやすい傾向があります。
  • 頭部白癬(とうぶはくせん)
  • 頭皮や髪の毛に白癬菌が感染すると、「しらくも」とも呼ばれます。
  • 頭皮にフケが増えたり、髪の毛が抜けたり、炎症が起こって赤くなったりします。
  • 場合によっては、円形脱毛症と間違われることもあります。

これらの白癬を引き起こす主なカビは、「トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)」という種類です。他にも、「トリコフィトン・インターデジタル(T. interdigitale)」や「トリコフィトン・メンタグロフィテス(T. mentagrophytes)」といった菌が原因となることもあります。特に、足白癬と爪白癬は世界的に見てもよく見られる病気です。

白癬の種類によって、治療に使うお薬や期間が少し異なります。もし気になる症状があれば、放置せずに皮膚科を受診してください。早めに適切な診断と治療を始めることが、他の家族への感染を防ぐことにもつながります。

白癬の原因

白癬は、皮膚の表面にいる「皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)」というカビの仲間が原因で起こる病気です。このカビは、「白癬菌(はくせんきん)」とも呼ばれ、ジメジメした暑い場所が大好きです。例えば、お風呂上がりで濡れた足の指の間や、汗をかきやすい季節には、白癬菌が元気に増えやすくなります。

白癬菌にはいくつかの種類があります。特に「トリコフィトン・ルブルム」という菌は、患者さんから多く見つかる代表的な存在です。他にも、「トリコフィトン・インターデジタル」や「トリコフィトン・メンタグロフィテス」といった菌も原因となります。世界の研究でも、これらの菌が白癬の主な原因となっていることが示されています。

白癬菌は、感染した人の皮膚から落ちる「フケ」や「垢(あか)」に混じり、周囲に広がります。そして、菌が付着した場所に触れることで、人から人へと感染してしまうのです。直接肌が触れなくても、間接的にうつる可能性があるため、注意が必要な病気です。

特に感染が広がりやすい場所としては、以下のような例が挙げられます。

  • 家族みんなで使うお風呂の足ふきマット
  • プールサイドやスポーツジムの床
  • 共用のスリッパ

足の裏や指の間に白癬があると、菌が爪に入り込み「爪白癬(つめはくせん)」になることもあります。爪は一度感染すると、なかなか治りにくい場所です。

また、「子どもだから水虫にはならないだろう」と思われがちですが、実はそうではありません。最近の研究では、子どもの爪白癬も珍しくないことが分かってきています。世界的な報告では、子どもの爪白癬の有病率は0%から7.66%と幅があります。また、年齢が上がるにつれて、感染するお子さんが増える傾向が見られます。子どもの爪白癬も、大人の症状とよく似た形で現れます。ご家族の間で感染が広がらないよう、日頃からの予防がとても大切です。

白癬の症状

白癬(はくせん)は、皮膚にカビの仲間が感染して起こる病気です。感染した場所によって、さまざまな症状が現れます。これらの症状は、放っておくと悪化したり、他の家族にうつしたりする可能性もあります。

もし、ご自身の体や足に「おかしいな」と感じる変化があったら、それは白癬のサインかもしれません。どのような症状が出やすいのか、詳しく見ていきましょう。

1. 足白癬(水虫)の症状

足に白癬菌が感染すると、「水虫」と呼ばれます。特に、じめじめしやすい足の指の間や足の裏に症状が出やすいです。

  • 指の間にできるタイプ
  • 足の指の間が白くふやけて、皮がめくれることがあります。
  • 小さな水ぶくれができたり、じゅくじゅくとすることもあります。
  • 強いかゆみを感じることが多いですが、かゆみがほとんどない方もいます。
  • 足の裏や側面にできるタイプ
  • 小さな水ぶくれがポツポツとでき、それが破れて皮がむけることがあります。
  • 強いかゆみを伴うことがよく見られます。
  • かかとにできるタイプ
  • かかとがカサカサして硬くなり、ひび割れを起こすことがあります。
  • このタイプはかゆみがほとんどないため、水虫だと気づきにくいのが特徴です。

2. 体部白癬(ぜにたむし)の症状

腕、胸、お腹、顔など、体のいろいろな場所に白癬菌が感染した状態を「ぜにたむし」と呼びます。

  • 赤いリング状の発疹
  • 皮膚に赤くて丸い、少し盛り上がったような発疹ができます。
  • 発疹のふちがドーナツのように赤く広がり、真ん中は少し落ち着いているのが特徴です。
  • かゆみを伴うことが多く、思わず掻いてしまう方もいらっしゃいます。

見た目の赤みが引いて、一見治ったように見えても、かゆみなどの不快な症状が続くことがあります。ある研究では、見た目の病変が完全に消えなくても、かゆみなどの主観的な症状が改善することで、患者さんの生活の質が向上したと報告されています。そのため、見た目だけでなく、ご自身の感じている症状も医師に伝えることが大切です。

3. 股部白癬(いんきんたむし)の症状

太ももの付け根や股の周り、お尻などに白癬菌が感染した状態が「いんきんたむし」です。

  • 強い赤みと広がり
  • 股の部分に、赤みが強く、はっきりとしたフチのある発疹ができます。
  • この発疹は、次第に範囲が広がる傾向があります。
  • 非常に強いかゆみを伴うことが多く、日常生活に大きな不快感をもたらします。
  • 特に通気性が悪く、蒸れやすい環境で悪化しやすい傾向があります。

4. 爪白癬(つめはくせん)の症状

足の爪や手の爪に白癬菌が感染すると、「爪白癬」になります。

  • 爪の色と形の変化
  • 爪が白っぽく濁ったり、黄色や茶色に変色したりします。
  • 爪が厚くなり、でこぼこしたり、もろくなってボロボロと崩れてきたりします。
  • 進行すると、爪の形が大きく変わってしまうこともあります。

爪白癬は、痛みやかゆみをほとんど感じないことが多いため、長い間気づかずに放置してしまう方が少なくありません。

昔は子どもには珍しいと言われましたが、最近の研究ではそうではありません。世界中の研究をまとめた報告では、お子さんの爪白癬にかかっている割合は0%から7.66%というデータもあります。この割合は、年齢が上がるにつれて増える傾向が見られます。お子さんの爪白癬の症状も、大人の方とよく似ていて、足の爪に多く見られ、足の水虫(足白癬)と一緒に見つかることも珍しくありません。

もしご自身の爪や、お子さんの爪にこのような変化が見られたら、自己判断せずに、一度皮膚科を受診して相談してください。早期に適切な治療を始めることが、症状の悪化や他の方への感染を防ぐためにとても重要です。

白癬の検査・診断

もし皮膚や爪に「もしかして白癬かな?」と感じる変化があれば、自己判断はせずに、ぜひ医療機関を受診してください。なぜなら、白癬は見た目だけでは他の皮膚の病気と区別しにくいことがあるからです。私たち医師は、白癬菌が本当にいるのかを専門の検査でしっかり確認します。

白癬菌を見つけるための主な検査は、次の2つです。

  • 直接鏡検(ちょくせつきょうけん)
  • 病変のある場所から、皮膚の表面や爪のごく一部を
  • 小さなピンセットなどで少しだけ採取します。
  • それを顕微鏡で観察して、白癬菌がいるかどうかを直接確認します。
  • この検査は、比較的早く結果がわかるため
  • 白癬菌がいるかどうかをすぐに判断できます。
  • 培養検査(ばいようけんさ)
  • 直接鏡検と同じように採取した皮膚や爪の一部を
  • 白癬菌が育ちやすい専用の皿(培地)に入れて育てます。
  • 結果が出るまでに少し時間がかかりますが
  • どんな種類の白癬菌が原因なのかを詳しく知ることができます。
  • 原因菌が分かれば、より効果的なお薬を選ぶことにもつながります。

「子どもの場合は大丈夫でしょう?」と考える方もいるかもしれません。しかし、実は子どもの爪にも白癬菌が感染することがあります。最近の研究では、子どもの爪白癬(つめはくせん)は、全体のおよそ0%から7.66%のお子さんに見られると報告されています。これは決して珍しいことではありません。また、年齢が上がるにつれて、爪白癬になるお子さんが増える傾向も分かっています。さらに、足にできる白癬(水虫)と爪白癬は、同時に見つかることも、研究によると25%と少なくありません。

子どもの爪白癬の見た目の症状も、大人の方と同じような形で見られます。主な原因菌は「トリコフィトン・ルブルム」というカビの仲間であることが多いです。これらの検査で正確に診断することで、一人ひとりに合った適切な治療を始めることができます。早めに発見して治療を始めることは、症状を悪化させないためにも、他の家族へうつさないためにも、とても大切なことなのです。

白癬の治療

白癬(はくせん)は、皮膚にカビの仲間が感染する病気です。 この白癬菌をしっかりやっつけるためには、大きく分けて「塗り薬」と「飲み薬」の2つの方法があります。 私たち医師は、白癬菌が体のどこにいるのか、症状の具合、そして皆さんの体質などをよく見て、ぴったりの治療法を選んでいきます。 治療を途中でやめてしまうと、せっかく良くなりかけた症状がまた悪くなってしまうことがあります。 カビの仲間はしぶといので、医師の指示に従い、根気強く続けることがとても大切です。

1. 塗り薬について

塗り薬は、皮膚の表面にいる白癬菌に直接届くお薬です。 足の指の間や足の裏、体や股(また)など、目に見える場所に白癬菌がいる場合に使うことが多いです。 塗り薬は、症状が出ている部分だけでなく、その周りの少し広い範囲にも毎日しっかりと塗ることが大切です。 これは、白癬菌が目に見えない範囲にも広がっている可能性があるためです。 お風呂上がりの清潔な肌に塗ると、薬が浸透しやすくなりますよ。

2. 飲み薬について

飲み薬は、塗り薬だけでは届きにくい場所にいる白癬菌に効くお薬です。 特に、爪の中に白癬菌が入り込んでしまう「爪白癬(つめはくせん)」や、体の広い範囲に広がってしまった白癬の場合に使われます。 飲み薬は体の内側から白癬菌を退治するため、より確実に効果が期待できます。 飲み薬での治療は、ある程度の期間続けることが重要です。 例えば、足の爪にできる爪白癬の場合、テルビナフィンという飲み薬を毎日飲む期間を、12週間から24週間に長くすると、1年後に白癬菌がいなくなる割合が大きく高まることがわかっています。 また、ポサコナゾールやオテセコナゾールといった新しい飲み薬も登場しており、これらの薬はテルビナフィンよりも効果が高い可能性があるという研究結果も出ています。

さらに、フォスラヴコナゾールという飲み薬で治療を始めたあと、24週間経った時点で爪の病気(病変)が半分より少し(55%)以上良くなっている場合は、それ以上薬を飲まなくても高い確率で治ると期待できます。 しかし、もし24週間経っても半分より改善が少なかった場合は、追加で同じ薬の治療を続けることで、最終的に完治する可能性が大きく上がるという研究結果があります。 症状の改善度合いを見て、私たち医師が追加治療が必要かどうかを判断していきます。 飲み薬を飲む期間や量は、医師の指示をしっかり守ることが大切です。

3. 日常生活での注意点

白癬の治療では、お薬の効果を最大限に引き出すために、皆さんの生活習慣を見直すこともとても重要です。 例えば、毎日お風呂で体をきれいに洗うこと、特に足を清潔に保ち、乾かすことなどが挙げられます。 靴や靴下を毎日替えることや、家族と足ふきマットを共有しないなども、白癬菌が広がらないための大切な工夫です。 「まさか自分の体にカビが」と思うかもしれませんが、誰にでも起こりうる病気です。 気になることがあれば、早めに医療機関を受診してくださいね。