発症すれば致死率ほぼ100%。それが、狂犬病という感染症が持つ、最も恐ろしい事実です。現在の医療技術をもってしても、一度症状が出てしまえば有効な治療法は存在しません。世界保健機関(WHO)は、アジアやアフリカを中心に、世界で毎年5万人以上がこの病気で命を落としていると報告しています。
幸いにも日本では長らく発生が確認されていないため、どこか他人事のように感じられるかもしれません。しかし、海外渡航が身近になった現代において、そのリスクは決してゼロではないのです。感染源は犬だけに限らず、アライグマやコウモリ、そして最近では猫からの感染も問題視されています。
この記事では、あなたの命を守るために知っておくべき狂犬病の正しい知識と、万が一動物に咬まれた際の具体的な対処法について詳しく解説します。
狂犬病の概要
狂犬病は、ウイルスを持つ動物に咬まれてうつる病気です。 この病気の最も注意すべき点は、一度症状が出てしまうと、 現在の医療技術をもってしても治療法がないという事実です。 発症した場合、残念ながらほぼ100%の方が亡くなります。
世界保健機関(WHO)は、世界で毎年5万人以上の方が、 狂犬病で命を落としていると報告しています。 その多くはアジアやアフリカで発生しています。
最近の研究では、特に東南アジアの状況が注目されています。 ベトナムやフィリピンなどでは、今も狂犬病の発生があります。 原因として、ワクチンを打っていない犬が多いことや、 犬の肉を扱う職業上のリスクなどが挙げられています。
現在の日本では、幸いにも狂犬病の発生はありません。 しかし、海外で感染し、帰国後に発症した例は過去にあります。 海外へ渡航する際は、決して他人事ではないと認識しましょう。
【狂犬病のポイント】
- 感染の原因 狂犬病ウイルスを持つ動物(主に犬)の唾液が、 咬まれたり、ひっかかれたりした傷から体に入ることです。
- 危険性の高さ 症状が出てしまうと、有効な治療法がありません。
- 発生している地域 アジアやアフリカを中心に、世界中で発生が続いています。
- 日本の今の状況 国内での発生はありませんが、海外からの輸入感染のリスクはあります。
狂犬病の種類
狂犬病の原因となるウイルスは一つです。 しかし、どの動物からうつるかによって、 大きく2つのタイプに分けられています。 これは対策方法がそれぞれ異なるためです。
- 都市型狂犬病 主に犬から犬へ、そして犬から人へとうつるタイプです。 アジアやアフリカで今も問題となっています。 犬への予防接種が十分でないことが原因です。 日本では、犬の登録と予防接種を徹底しています。 この対策が成功し、長年発生がありません。
- 森林型狂犬病 キツネやアライグマ、コウモリなど野生動物の間で流行します。 人がこれらの動物に咬まれることで感染します。 ヨーロッパや北米などで見られるタイプです。 海外の自然豊かな場所では注意が必要です。
また最近、これまであまり注目されていなかった、 猫からの狂犬病感染が新たな問題として懸念されています。 犬の狂犬病対策が世界的に進められてきた結果、 猫からの感染リスクが浮かび上がってきたのです。
猫はもともと狂犬病ウイルスを体内に持っている動物ではありません。 しかし、猫は単独で狩りをする優れたハンターです。 そのため、ウイルスを持つコウモリや他の野生動物と接触し、 偶然うつってしまうことがあります。 公衆衛生を守るため、猫へのワクチン接種も重要視されています。
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種類
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主な感染源となる動物
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主な発生地域
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都市型狂犬病
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犬
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アジア、アフリカ
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森林型狂犬病
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キツネ、アライグマ、コウモリなど
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ヨーロッパ、北米
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狂犬病の原因
狂犬病は、「狂犬病ウイルス」という病原体が、 体の中に入り込むことで起こる感染症です。 このウイルスは、病気にかかった動物の、 よだれ(唾液)の中に多く含まれています。
ウイルスが体内へ入る主な経路は、傷口です。
- ウイルスを持つ動物に咬まれる
- ひっかかれた傷に動物のよだれが付く
- 傷や、目・口・鼻の粘膜によだれが触れる
主な感染源となる動物
世界で見ると、人の狂犬病のほとんどは、 ウイルスに感染した犬からうつることが原因です。 しかし、犬だけでなく、人を含むすべての、 哺乳類(お乳で育つ動物)が感染する可能性があります。
どの動物が主な感染源となるかは、地域で異なります。
- アジアやアフリカ 主に犬が原因です。
- ヨーロッパ キツネからの感染が多く見られます。
- 北米・中南米 アライグマ、スカンク、コウモリなどが主な感染源です。
近年、世界的に犬の狂犬病対策が進んだ結果、 「猫」が新たな感染源として問題になっています。 猫は優れたハンターであるため、ウイルスを持つ、 コウモリなどを捕まえる際に感染してしまうのです。
感染が広がりやすい環境
東南アジアなどの一部地域では、今も発生が続いています。 ワクチンを打っていない犬が多いことや、 人口が密集していることなどがリスクを高めています。
また、ベトナムでは犬の肉を扱う職業の方が、 感染するリスクも報告されています。 このように、生活環境や文化の違いも、 感染の広がりに関係しているのです。
狂犬病の症状
狂犬病ウイルスに感染しても、すぐには症状は出ません。 ウイルスが体に入ってから症状が出るまでの期間を潜伏期間と呼びます。 この期間は、通常1か月から3か月ほどです。 しかし、咬まれた場所やウイルスの量によっては、 1年以上経ってから症状が出ることもあり、注意が必要です。
症状は時間とともに進み、大きく3つの段階に分けられます。
- 初期症状 発熱、頭痛、だるさ、吐き気など、風邪によく似た症状が出ます。 しかし、狂犬病に特徴的なのは、ウイルスが入った傷口の周りに、 チクチクする痛みやしびれ、かゆみを感じることです。
- 神経症状 ウイルスが脳に達すると、神経に関するはっきりとした症状が出ます。 理由もなく不安になったり、錯乱したり、非常に攻撃的になります。 特に、以下の2つの症状は狂犬病の大きな特徴です。 恐水症(きょうすいしょう) 水を飲もうとすると、のどの筋肉が激しくけいれんします。 強い痛みを伴うため、水を極端に怖がるようになります。 恐風症(きょうふうしょう) 顔に風が当たるなどの、ほんのわずかな刺激でも、 全身のけいれんを引き起こすことがあります。
- 末期症状 最終的には全身がけいれんし、意識がなくなって昏睡状態に陥ります。 そして、呼吸をするための筋肉がまひしてしまい、 呼吸ができなくなります。一度発症すると、有効な治療法はありません。
狂犬病は犬からうつるイメージが強いですが、猫にも注意が必要です。 猫は優れたハンターであるため、ウイルスを持つコウモリなどを捕まえ、 その際に感染してしまうことがあります。 犬の狂犬病対策が進んだ結果、猫からの感染が新たな問題になっています。
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症状の段階
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主な症状
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初期
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・発熱、頭痛、だるさなど風邪に似た症状<br>・咬まれた場所の痛み、しびれ、かゆみ
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神経症状期
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・強い不安感、興奮、錯乱、幻覚<br>・水を怖がる(恐水症)<br>・風を怖がる(恐風症)
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末期
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・全身のけいれん<br>・昏睡状態<br>・呼吸困難、呼吸停止
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狂犬病の検査・診断
狂犬病は、発症すると有効な治療法がありません。 そのため検査で診断を確定させてから治療する、 という一般的な病気への対応は通用しません。
感染の可能性がある時点で、すぐに適切な対応をとる。 この「疑わしきは治療する」という考え方が、 命を守るうえで非常に重要になります。
動物に咬まれた後の判断の流れ
動物に咬まれたり、ひっかかれたりした場合は、 まず落ち着いて傷口を石鹸と水でよく洗いましょう。 そして、すぐに医療機関を受診してください。 医師は、主に以下の流れで判断します。
- 動物の観察ができる場合 もし人を咬んだ犬が、その後10日間健康なら、 その犬は狂犬病ではなかったと判断できます。 咬まれた人が感染した可能性はないと考えます。
- 動物の観察ができない場合 咬んだ動物が逃げた、または不明な場合です。 この場合は、検査の結果を待つことはしません。 すぐに「暴露後ワクチン接種」を開始します。 最近の研究でも、犬の状況が確認できない際は、 予防接種が適応になると強く推奨されています。
発症してしまった場合の検査
発症が疑われる場合、確定診断のために、 唾液や涙などからウイルスを検出する検査や、 血液中の抗体を調べる検査が行われます。
しかし、これらの検査は主に発症後に行われるものです。 咬まれてすぐの感染を調べるものではありません。 動物に咬まれたら、決して自己判断はせず、 ただちに医療機関を受診することが大切です。
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状況
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医療機関での対応
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咬んだ動物を10日間観察できる
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動物が元気であれば、狂犬病の心配はありません。
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咬んだ動物が不明・観察できない
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検査を待たずに、すぐに予防接種を開始します。
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狂犬病の治療
狂犬病は、一度症状が出てしまうと、 残念ながら有効な治療法がありません。 そのため治療の目的は「発症させないこと」です。 ウイルスを持つ動物に咬まれた後の対応が、 命を守るためのすべてだと言えます。
発症を防ぐ治療「暴露後予防」
動物に咬まれるなど、感染の可能性がある場合は、 まさに時間との勝負になります。 落ち着いて、すぐに行動することが大切です。
ご自身ですぐにできる応急処置
- 傷口をよく洗う まず、石鹸とたっぷりの水道水を使ってください。 最低でも15分間、傷口を念入りに洗い流します。 これは、傷についたウイルスを物理的に減らすためです。 この最初の処置が、感染リスクを下げる第一歩です。
この応急処置をしたら、すぐに医療機関を受診してください。 傷が小さくても、決して自己判断してはいけません。
医療機関で行われる治療
医療機関では、発症を防ぐために以下の治療を行います。
- 傷口の専門的な処置 まず、感染を防ぐため傷口を改めてきれいにします。 必要なら、汚れた組織を取り除く処置も行います。 研究でも、この洗浄と処置を丁寧に行うことが、 感染リスクを減らし、傷の治りを助けるとされています。
- 狂犬病ワクチンの接種 体の免疫力を高め、ウイルスの活動を抑え込みます。 決められたスケジュールで、複数回接種します。 特に、咬んだ動物の健康状態が10日間確認できない場合、 このワクチン接種が強く推奨されます。
- 狂犬病免疫グロブリン(RIG)の投与 傷がひどいなど、感染リスクが特に高い場合に使います。 ワクチンの効果が出るまでの間、ウイルスと戦うための、 助っ人のような薬です。傷の周りに直接注射します。