低血圧

健康診断で「血圧が低いですね」と言われた経験はありませんか。高血圧と違い、低血圧は治療の明確な基準がなく、「体質だから大丈夫」と見過ごされがちです。実際に、めまいや立ちくらみといった症状がなければ、大きな問題とは考えられていません。

しかし、その「問題ない」はずの低血圧が、実は特定の状況下で深刻なリスクを招くことをご存知でしょうか。特に注意が必要なのが手術のときで、ある研究では手術中の低血圧が術後のせん妄(一時的な混乱状態)のリスクを約2.3倍に高めると報告されています。

この記事では、普段は見過ごされがちな低血圧に潜む本当のリスクから、日常生活で注意すべきサインまで詳しく解説します。ご自身の体質と向き合い、いざという時のために備えましょう。

低血圧の概要

健康診断などで「血圧が低いですね」と言われたことはありませんか。 高い血圧と違い、低い血圧はあまり問題にされないことが多いです。

高血圧には「収縮期血圧140mmHg以上」といった明確な基準があります。 しかし、低血圧には「この数値以下なら治療が必要」という基準がありません。 血圧が低いこと自体が、すぐに問題になるわけではないためです。

治療の対象となるのは、症状によって日常生活に支障が出ている場合です。 例えば、めまいや立ちくらみ、朝起きるのがつらいといった症状です。 特に症状がなければ、血圧が低くても過度に心配する必要はありません。

ただし、普段は問題がなくても注意すべき場面が「手術」のときです。 手術中に血圧が低い状態が続くと、術後に問題が起こりやすくなります。 多くの研究を分析した報告では、以下のリスクが高まるとされています。

  • 急性腎障害 腎臓の働きが急に悪くなる状態です。
  • 脳卒中 脳の血管が詰まったり破れたりする病気です。
  • 心臓のトラブル 心筋梗塞など、心臓に大きな負担がかかります。

このように、低血圧は状況によって慎重な管理が求められます。 もし、低血圧による症状でお困りの場合は、放置しないでください。 まずは、かかりつけ医や内科、循環器内科で相談してみましょう。

低血圧の種類

ひとくちに低血圧といっても、いくつかの種類に分けられます。 原因がはっきりしているかどうかで分ける方法が一般的です。 また、血圧が下がるタイミングによっても分類されます。

原因による分類

低血圧は、何か原因となる病気があるかどうかで分けられます。 大きく2つのタイプに分けられるので、見ていきましょう。

  • 本態性(ほんたいせい)低血圧症 特別な病気がないのに、いつも血圧が低い状態です。 低血圧で悩む方の約9割が、このタイプにあたります。 遺伝的な体質などが関係していると考えられています。
  • 症候性(しょうこうせい)低血圧症 何らかの病気や薬の影響で、血圧が低くなる状態です。 心臓の病気やケガによる出血などが原因になります。 この場合は、原因となっている病気の治療が大切です。

血圧が下がる状況による分類

いつもは正常でも、特定の状況で一時的に血圧が下がるタイプです。 代表的なものを下の表にまとめました。

種類

特徴

起立性低血圧

急に立ち上がった時に、脳への血流が追いつかなくなります。

その結果、めまいや立ちくらみが起こる状態です。

食後低血圧

食後、消化のために血液がおなかに集まります。

脳への血流が減り、強い眠気やだるさを感じます。

急性低血圧

ケガや脱水、アレルギーなどで急に血圧が下がる状態です。

特に手術中の急な血圧低下は注意が必要です。

手術中の血圧低下(術中低血圧)は、手術後の合併症のリスクを高めます。 ある研究では、術後せん妄(一時的に頭が混乱する状態)のリスクが約2.3倍になると報告されました。 これは避けられる可能性のある危険因子のため、手術中は厳重な管理が行われます。

低血圧の原因

低血圧がなぜ起こるのか、その原因は大きく2つに分けられます。 特別な病気が隠れていない「体質」によるものと、何らかの病気や薬が原因となっているものです。

1. 本態性(ほんたいせい)低血圧症

原因がはっきりと特定できない、いわゆる「体質的」な低血圧です。 低血圧で悩んでいる方の約9割が、このタイプにあたります。 遺伝的な要因も関係していると考えられています。

2. 症候性(しょうこうせい)低血圧症

病気や薬、ケガなどが原因で血圧が低くなっている状態です。 原因がはっきりしているため、その原因を治療することが大切になります。 具体的な原因をいくつか見ていきましょう。

  • 心臓や血管の病気 心臓のポンプ機能が弱まると、全身に血液を送る力が弱まります。 その結果、血圧が下がってしまいます。
  • 血液量の減少 ケガでの出血や、夏の脱水などで体の中を流れる血液が減ります。 血液の量が減ると、血管にかかる圧力が弱まり血圧が下がります。
  • 自律神経の乱れ ストレスや不規則な生活は、血圧を調整する自律神経を乱します。 血圧のコントロールがうまくいかなくなり、低血圧になります。
  • 手術中の影響 手術中の出血や麻酔の影響で、一時的に血圧が下がることがあります。 この「術中低血圧」は、手術後の回復に影響を与える可能性があります。 ある研究では、手術中に低血圧の状態が続くと、術後に以下の問題が起こりやすくなると報告されています。
  • 急性腎障害(腎臓の働きが急に悪くなる)
  • 心筋梗塞などの心臓トラブル
  • 脳卒中
  • 術後せん妄(一時的に頭が混乱する状態)
  • 術中低血圧は避けられる可能性のある危険な状態です。 そのため、手術中は麻酔科医が厳重に血圧を管理しています。

低血圧の症状

血圧が低いと、なぜ様々な症状が起こるのでしょうか。 それは、血液を全身に送り出す力が弱い状態だからです。 脳や心臓、筋肉など体のすみずみまで酸素や栄養が届きにくくなります。 その結果、全身にいろいろな不調があらわれることがあるのです。

ご自身の体調と比べながら、以下の症状を確認してみましょう。

【低血圧のセルフチェックリスト】

  • 朝、すっきりと起きられない 寝ている間は血圧が下がりますが、低血圧の人は朝になっても血圧が上がりにくく、脳がなかなか目覚めないためです。
  • 立ち上がると、めまいや立ちくらみがする 急に立つと、重力で血液が足の方へ下がります。脳への血流が一時的に減るため、ふらつきやすくなります。
  • なんとなく体がだるく、疲れやすい 全身の筋肉への血流が足りないと、活動に必要な酸素や栄養が不足し、少し動いただけでも疲れを感じやすくなります。
  • 頭痛や肩こりが続いている 頭や首周りの筋肉の血行が悪くなることが原因の一つです。
  • 食欲がない、または胃がもたれる感じがする 胃腸の働きも血流に支えられています。血流が悪いと消化機能が低下し、食欲不振や胃もたれにつながります。

また、普段は症状がなくても手術のときには注意が必要です。 手術中に血圧が低い状態(術中低血圧)が続くと、術後の回復に影響が出ることがあります。 多くの研究を分析した報告によると、術中低血圧は以下のリスクを高めることがわかっています。

  • 急性腎障害(腎臓の働きが急に悪くなる)
  • 脳卒中
  • 心筋梗塞などの心臓トラブル
  • 術後せん妄(一時的に頭が混乱する状態)

もちろん、手術中は医師が厳重に血圧を管理します。 しかし、もし上記のようなつらい症状に悩まされている場合は、その背景に低血圧が隠れているかもしれません。

低血圧の検査・診断

低血圧の診断は、血圧の数値だけで決まるわけではありません。 めまいや立ちくらみ、だるさといった症状があるかが重要です。 症状がなければ、血圧が低くても治療の必要がないことも多いです。

診察では、まずどのような症状がいつ起こるのかを詳しく聞きます。 その後、血圧測定や身体診察で、低血圧の原因を探ります。 必要に応じて、以下のような詳しい検査を行うこともあります。

  • 心電図検査 心臓の動きのリズムが乱れていないかを確認します。
  • 心臓エコー検査 超音波で心臓のポンプ機能が弱っていないかを調べます。
  • 血液検査 貧血など、低血圧の原因になる他の病気がないかチェックします。

特に、手術を受けるときには血圧の管理が非常に重要です。 手術中に血圧が低い状態(術中低血圧)が続くと体に負担がかかります。 多くの研究を分析した報告では、以下の危険性が高まるとされています。

  • 急性腎障害(腎臓の働きが急に悪くなる)
  • 脳卒中(脳の血管が詰まる・破れる)
  • 術後せん妄(術後に一時的に頭が混乱する状態)

術中低血圧は、避けられる可能性のある危険な状態です。 そのため、手術中は麻酔科医が厳重に血圧を管理しています。 これらの検査結果を総合的に見て、低血圧の原因を突き止め診断します。

低血圧の治療

低血圧の治療は、まず原因となる病気がないかを調べることが大切です。 原因がはっきりしない「本態性低血圧」で症状がなければ、治療は不要です。 しかし、めまいやだるさなどで生活に困っている場合は治療を考えます。 治療の中心は「生活習慣の見直し」と「お薬での治療」の2つです。

日常生活での工夫

まずは毎日の生活を見直すことから始めましょう。 できることから少しずつ試してみてください。

  • 食事と水分をしっかりとる 栄養バランスの良い食事を3食きちんと摂ることが基本です。 水分と塩分も、汗をかく夏場などは意識して補給しましょう。
  • 適度な運動を続ける ウォーキングなどで下半身の筋肉を鍛えることがおすすめです。 足の筋肉は、血液を心臓へ送り返すポンプの役割を助けます。
  • ゆっくり動くことを心がける 朝起きるときや椅子から立つときは、ゆっくり動きましょう。 急に動くと、脳への血流が追いつかず立ちくらみが起こりやすくなります。

お薬での治療

生活習慣を改善しても症状が良くならない場合は、お薬を使います。 血圧を上げるお薬(昇圧剤)で、つらい症状を和らげることを目指します。

手術など特別な状況での注意点

普段は症状がなくても、手術のときには低血圧に注意が必要です。 手術中に血圧が低い状態が続くと、体に大きな負担がかかります。 多くの研究を分析した報告では、以下の危険性が高まるとされています。

  • 急性腎障害 腎臓の働きが急に悪くなる状態です。
  • 脳卒中 脳の血管が詰まったり破れたりする病気です。
  • 術後せん妄(せんもう) 術後に一時的に頭が混乱する状態です。

このような危険は避けられる可能性があるため、手術中は医師が厳重に血圧を管理します。 つらい症状がある方は、我慢せずに医師に相談することが大切です。