ケルスス禿瘡
頭皮のかゆみやフケ、ニキビに似たできもの。「いつものこと」と見過ごしていませんか?その症状、実は水虫と同じ「白癬菌」というカビが原因で起こる「ケルスス禿瘡」かもしれません。
この病気は、菌への過剰なアレルギー反応で頭皮に強い炎症を引き起こし、膿がたまってブヨブヨになるのが特徴です。放置すれば毛根が破壊され、髪が二度と生えてこない「瘢痕性脱毛」に至る恐れも。感染源は意外と身近で、犬や猫などのペットからうつることも少なくありません。
本記事では、このケルスス禿瘡について、その原因から正しい治療法までを詳しく解説します。手遅れになる前に、ご自身の症状と照らし合わせてみてください。
ケルスス禿瘡の概要
ケルスス禿瘡(けるすすとくそう)とは、頭皮に起こる少し特殊な皮膚の病気です。 原因は白癬菌(はくせんきん)というカビの一種で、水虫の原因菌としても知られています。
この菌が毛穴の奥深くに入り込むと、体を守ろうとする反応が過剰に起こります。 その結果、頭皮に強い炎症を引き起こしてしまうのです。 主な症状には以下のようなものがあります。
- 頭皮の見た目の変化 赤く腫れあがり、膿(うみ)がたまってブヨブヨとした塊ができます。
- 痛みや熱っぽさ 炎症が起きている部分に、痛みや熱を感じることがあります。
- 脱毛 炎症部分の髪の毛が、自然に抜けたり、軽く引っ張るだけで抜けたりします。
感染は人からだけでなく、犬や猫などのペットからうつることも少なくありません。 また、柔道やレスリングといった、人と体が触れ合うスポーツが原因となる場合もあります。
この病気は単なる湿疹とは違い、治療が遅れると毛根が破壊されてしまいます。 そして、髪が二度と生えてこない「瘢痕性脱毛(はんこんせいだつもう)」になる恐れがあります。
特に10歳以下のお子さんに多く見られますが、もちろん大人でも発症します。 頭皮に気になる症状があれば、早めに皮膚科や専門のクリニックを受診しましょう。
ケルスス禿瘡の種類
ケルスス禿瘡の原因となる白癬菌(はくせんきん)というカビには、いくつかの種類があります。 どの菌が原因かによって、どこから感染したのかという感染経路が異なるのが特徴です。
原因菌は、大きく「ヒトからうつるタイプ」と「動物からうつるタイプ」の2つに分けられます。
主な原因菌の種類と感染経路
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菌の種類 |
主な感染源 |
特徴 |
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ヒト好性菌 (例:トリコフィトン・トンスランス) |
ヒト |
人との直接的な接触によって感染します。特に柔道やレスリングなど、肌が触れ合う機会が多いスポーツ環境で広がることがあります。 |
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動物好性菌 (例:犬小胞子菌 いぬしょうほうしきん) |
動物 |
犬や猫といったペットから人に感染するタイプです。ケルスス禿瘡の原因としては、この動物からの感染が多くみられます。 |
これらの菌は、足の水虫などを引き起こす菌の仲間です。 この菌が頭皮に感染し、毛穴の深い部分で増殖すると、体を守るための免疫が過剰に反応します。 その結果、強い炎症が起きて膿がたまり、髪の毛が抜け落ちてしまうのです。
原因となる菌の種類が違っても、頭皮に強い炎症と脱毛を引き起こすという点は共通しています。 どの菌が原因かを特定することが、適切な治療への第一歩となります。
ケルスス禿瘡の原因
ケルスス禿瘡は、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が原因です。 この菌は水虫の原因としても知られており、毛穴の奥深くに侵入します。 そして、体を守るための免疫が過剰に反応することで発症します。
感染するきっかけは、主に2つのルートがあります。
- 動物からの感染 犬や猫などのペットからうつるケースが最も一般的です。 動物自身に症状がなくても、菌を保菌していることがあります。 ケルスス禿瘡の原因の約半数は、動物由来の菌とされています。
- 人からの感染 柔道やレスリングなど、肌が直接触れ合うスポーツが原因となります。 感染した人の頭皮や、菌が付着したタオルなどからうつるのです。
また、初期の軽いかゆみを自己判断で対処し、悪化させる方も少なくありません。 特に注意が必要なのが、ステロイド外用薬(塗り薬)の使用です。
頭皮の症状を湿疹だと思い込み、ステロイド薬を塗ってしまうことがあります。 ステロイドは炎症を抑える一方で、皮膚の免疫力も低下させます。 その結果、白癬菌の増殖を助けてしまい、症状が悪化するのです。
その他、高温多湿な環境や不衛生な状態も、菌が増える原因となります。 汗をかいたままにせず、頭皮を清潔に保つことが予防につながります。
ケルスス禿瘡の症状
ケルスス禿瘡の症状は、単なる頭皮の湿疹などとは大きく異なります。 初めは軽いかゆみやフケ、ニキビに似た症状から始まることもあります。 しかし、菌に対する体の強いアレルギー反応により、急速に悪化するのが特徴です。
ご自身の状態と比べられるよう、具体的な症状を以下にまとめました。 セルフチェックにお役立てください。
頭皮にあらわれる特徴的な変化
- 赤みと盛り上がり 患部が赤く腫れあがり、熱っぽさを持ちます。 炎症が強いため、盛り上がりが硬くなることもあります。
- たくさんの膿(うみ) 膿がたまった黄色いブツブツ(膿疱:のうほう)が多発します。 膿疱が集まり、蜂の巣状に見えることもあります。
- ブヨブヨした感触 患部を押すと、皮膚の下に膿がたまっているため、ブヨブヨと柔らかく感じます。
- 脱毛 炎症部分の髪の毛が、痛みを感じることなく簡単に抜けてしまいます。 これにより、円形などの脱毛斑(だつもうはん)ができます。
- 痛みやかゆみ 我慢できないほどの強いかゆみや、ズキズキとした痛みを伴います。
全身にあらわれる症状
炎症が重症化すると、頭皮だけでなく体全体に症状が及ぶことがあります。 これは、体の免疫機能が菌と激しく戦っているサインです。
- 発熱
- 全身のだるさ(倦怠感)
- 首や耳の後ろのリンパ節の腫れと痛み
これらの症状は、病気が悪化していることを示しています。 特に注意すべきは、治療が遅れた際に残る後遺症です。 強い炎症で毛根が破壊されると、その部分は二度と髪が生えてきません。 この状態を「瘢痕性脱毛(はんこんせいだつもう)」と呼びます。
一つでも当てはまる症状があれば、自己判断せずに専門のクリニックを受診しましょう。
ケルスス禿瘡の検査・診断
ケルスス禿瘡の診断は、見た目だけでは確定できません。 なぜなら、細菌による感染症や円形脱毛症など、症状が似た病気があるためです。 原因である白癬菌(はくせんきん)を特定し、正しい治療を始めるために検査は不可欠です。
診断は、以下のステップで進められるのが一般的です。
- 1. 問診と視診 まず、患者さんから症状の経過や生活環境について詳しくお聞きします。 「いつから症状があるか」「ペットを飼っているか」などが重要な情報です。 次に、頭皮の赤みや腫れ、膿の状態、脱毛の範囲などを目で見て確認します。
- 2. 顕微鏡検査 症状が出ている部分の髪の毛や、皮膚のかけらを少しだけ採取します。 そして、顕微鏡を使って白癬菌がいるかどうかをその場で直接確認します。 この検査で原因菌が見つかれば、診断がつくことが多いです。
- 3. 真菌培養検査 顕微鏡検査で菌が見つからない場合や、菌の種類を特定するために行います。 採取した毛や皮膚を、菌が育つ特別な栄養分(培地)で育てます。 どの種類の菌が原因か分かれば、最も効果的な薬を選ぶことができます。 ただし、結果が出るまでには数週間ほど時間がかかります。
これらの検査で診断が難しい場合には、皮膚の一部を切り取って詳しく調べる「皮膚生検」という検査を行うこともあります。
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検査の種類 |
この検査でわかること |
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問診・視診 |
症状の経過や生活習慣から、病気の背景を探ります。 |
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顕微鏡検査 |
患部に白癬菌がいるかどうかを、直接目で見て確認します。 |
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真菌培養検査 |
白癬菌の種類を特定し、効果的な薬を見つける手がかりにします。 |
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皮膚生検 |
診断が難しい場合に、他の病気でないことを確かめます。 |
ケルスス禿瘡の治療
ケルスス禿瘡の治療は、原因である白癬菌(はくせんきん)を体の内側から退治することが基本です。 菌が毛穴の奥深くに潜んでいるため、塗り薬だけでは効果が不十分なためです。 そのため、カビの増殖を抑える「抗真菌薬(こうしんきんやく)」という飲み薬での治療が中心となります。
治療の主役となる飲み薬には、以下のような種類があります。
- テルビナフィン
- イトラコナゾール
- グリセオフルビン
これらの薬を、一般的には4〜8週間、長い場合は2〜3ヶ月ほど毎日飲み続ける必要があります。 見た目の症状が良くなっても、菌がまだ隠れていることが多いためです。 自己判断で薬をやめると再発する危険があるため、医師の指示通りに最後まで飲み切ることが大切です。
また、飲み薬と合わせて、症状を和らげるための補助的な治療も行います。 患者さんの状態に合わせて、以下のような治療法を組み合わせます。
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治療法 |
内容・目的 |
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塗り薬 (抗真菌薬) |
飲み薬の効果を助ける目的で使います。頭皮の表面にいる菌の広がりを抑える役割があります。 |
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膿を出す処置 (排膿:はいのう) |
膿がたくさんたまっている時に行います。膿を外に出すことで、痛みや腫れを早く和らげることができます。 |
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炎症を抑える薬 (ステロイド) |
腫れや痛みが非常に強い場合に短期間だけ使います。つらい症状を抑え、治療を続けやすくするためです。 |
治療中は定期的に通院していただき、症状の回復具合を確認します。 また、飲み薬の副作用が出ていないか血液検査などでチェックしながら、安全に治療を進めます。





