クリオピリン関連周期熱症候群

原因不明の熱や、じんましんに似た皮疹がくり返しあらわれ、つらい思いをしていませんか?その症状、もしかしたら体の免疫システムが誤作動を起こす「クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)」という、非常にまれな病気が原因かもしれません。

この病気は遺伝子の変化によって引き起こされる自己炎症性疾患の一つで、日本の患者数は約100人という指定難病です。軽症から重症までタイプがあり、放置すると難聴や腎臓の病気につながる可能性も指摘されています。

この記事では、謎の多いこの病気の正体から、ご自身の状態を知るための症状の見分け方、そして炎症を抑える最新の治療法まで詳しく解説します。大切な体からのサインを見逃さないために、ぜひご一読ください。

クリオピリン関連周期熱症候群の概要

クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)は、熱やじんましんのような皮疹が、くり返しあらわれる病気です。

私たちの体には、ウイルスや細菌から身を守る「免疫」という仕組みがあります。 しかし、この病気では、体に悪いものが入ってきていないのに、免疫システムが勘違いで働いてしまいます。 その結果、体のあちこちで炎症が起きてしまうのです。 これを「自己炎症性疾患」と呼びます。

原因は、体の設計図である「遺伝子」の変化です。 特に「クリオピリン」という、炎症を調整するタンパク質の設計図(NLRP3遺伝子)に変化があると考えられています。

この病気の基本的な情報を、以下にまとめました。

  • 病気の分類 自己炎症性疾患(ウイルスや細菌の感染が原因ではない)
  • 主な原因 クリオピリンというタンパク質に関わる遺伝子の変化
  • 日本の患者数 約100人(令和5年度末の受給者証所持者数は95人)
  • 国の制度 指定難病に定められている

この病気は非常にまれで、100万人に2〜3人ほどとされています。 症状のあらわれ方には個人差があるため、まずはご自身の状態を正しく知ることが、適切な治療への第一歩です。

クリオピリン関連周期熱症候群の種類

クリオピリン関連周期熱症候群は、症状の重さに応じて、主に3つのタイプに分けられます。

この分類は、今後の治療方針を決めるための大切な目安です。 ただし、症状のあらわれ方は人によってさまざまです。 そのため、症状が重なり合い、はっきりと分類できない中間的なタイプの方もいます。

重症度

病気の名前

主な特徴

軽症

家族性寒冷自己炎症症候群

(FCAS:エフキャス)

・寒さや冷たい空気にふれることが引き金になります。

・熱やじんましんのような発疹、関節の痛みが出ます。

・症状は、ほとんどの場合24時間以内におさまります。

中等症

マックル・ウェルズ症候群

(MWS:エムダブルエス)

・周期的な発熱や発疹が、通常1〜2日続きます。

・症状をくり返すうちに、聞こえにくさ(感音性難聴)があらわれることがあります。

・アミロイドーシスという合併症を起こし、腎臓の働きが悪くなる可能性もあります。

最も重症

CINCA症候群 / NOMID

(シンカ/ノミッド)

・生まれたときから症状があり、熱や発疹が長く続きます。

・皮膚や関節の症状のほかに、慢性的な髄膜炎(ずいまくえん)などの中枢神経の症状が特徴です。

・成長や発達に影響が出ることもあります。

このように、同じ病気でもタイプによって症状の出方が大きく異なります。 ご自身の状態を正しく把握するためにも、気になる症状があれば専門医に相談することが重要です。

クリオピリン関連周期熱症候群の原因

この病気は、私たちの体の設計図である「遺伝子」の変化が原因です。 具体的には、NLRP3という名前の遺伝子が深く関わっています。

このNLRP3遺伝子は、体の中で炎症を調整するタンパク質をつくります。 このタンパク質は「クリオピリン」と呼ばれています。 クリオピリンは、いわば「炎症のスイッチ」のような働きを持っています。

正常な状態では、ウイルスなど体にとって悪いものが入ってきた時だけ、 このスイッチがオンになり、体を守るために炎症を起こします。 しかし遺伝子に変化があると、スイッチが壊れたような状態になります。 その結果、必要がないのに常に炎症が起きてしまうのです。

この時に体の中で過剰につくられるのが、 「インターロイキン-1β」という炎症を起こす物質です。 この物質が、くり返す熱やじんましんのような皮疹を引き起こします。

遺伝子の変化が体に現れるパターンは、主に2つあります。

  • 親から子へ受け継がれる場合 両親のどちらかが原因となる遺伝子を持つと、 子どもに50%の確率で受け継がれることがあります。 これを「常染色体優性(顕性)遺伝」と呼びます。
  • 遺伝ではない場合 ご家族に同じ病気の方がいなくても発症することがあります。 これは、体の一部の細胞だけに遺伝子の変化が起こる、 「体細胞モザイク」という状態が原因のことがあります。 特に症状が重いタイプでは、このケースも少なくありません。

クリオピリン関連周期熱症候群の症状

クリオピリン関連周期熱症候群の症状は、体の様々な部分にあらわれます。 どのタイプでも見られる特徴的な症状は、じんましんに似た皮疹です。 しかし、一般的なじんましんと違い、かゆみは少ないことが多いです。

この病気は、症状の重さによって主に3つのタイプに分けられます。 ご自身の症状がどれに近いか、確認してみましょう。

  • 軽症型(家族性寒冷自己炎症症候群:FCAS) 寒さや冷たい空気にふれることがきっかけで、症状があらわれます。 熱や皮疹、関節の痛み、目の充血などが主な症状です。 これらの症状は、ほとんどの場合24時間以内におさまります。
  • 中等症型(マックル・ウェルズ症候群:MWS) 熱や皮疹、関節の痛みが、通常1〜2日ほど続きます。 この症状が、数週間から数ヶ月の周期でくり返し起こります。 また、症状をくり返すうちに、合併症があらわれることがあります。
  • 感音性難聴 音を感じ取る神経に問題が起き、聞こえにくくなります。
  • AAアミロイドーシス 異常なタンパク質が腎臓などの臓器にたまり、 機能が低下してしまう病気です。
  • 最も重症型(CINCA症候群 / NOMID) 生まれたときから皮疹などの症状がみられ、長く続きます。 関節の腫れや骨の変形、慢性的な頭痛などの神経症状が特徴です。 頭痛は、脳を包む膜に炎症が続く「慢性髄膜炎」が原因のことがあります。 その他、難聴や目の病気、成長の遅れなど、全身に影響が出ます。

これらの症状は、あくまで目安です。 タイプをはっきりと分けられない、中間的な症状の方もいます。 気になる症状があれば、放置せずに専門の医師に相談することが大切です。

クリオピリン関連周期熱症候群の検査・診断

この病気の診断は、いくつかの情報を総合的に判断して進めます。 問診や診察、そして血液を使った検査が中心となります。 これらを組み合わせて、慎重に診断を確定させていきます。

まず、医師が症状について詳しくお話をおうかがいします。 「いつから熱や皮疹が出ているか」 「寒さなど、症状が出るきっかけはあるか」 こうした情報が、診断のとても重要な手がかりになります。

次に、体の中で炎症が起きているかを確認するため、血液検査を行います。 そして診断を確定するために、遺伝子の検査が重要となります。 この病気の原因であるNLRP3遺伝子に変化がないかを、 採血した血液を使って詳しく調べていきます。

ただし、通常の遺伝子検査では変化が見つからないこともあります。 これは、遺伝子の変化がある細胞とない細胞が体の中に混在する、 「体細胞モザイク」という状態が原因のことがあるからです。 その場合は、より精密な検査を検討することもあります。

診断は、主に以下の基準に基づいて行われます。

  • 基準1 NLRP3遺伝子に、病気の原因となる変化が見つかる。
  • 基準2 遺伝子の変化が見つからなくても、次のaとbを両方満たす場合。
  • a. 赤ちゃんの頃から、体の炎症が続いている。
  • b. 「骨の端が大きくなる変形」「じんましん様の皮疹」「神経の症状(難聴など)」のうち、2つ以上があてはまる。

このように、遺伝子検査の結果だけでなく、特徴的な症状が診断の決め手となることもあります。 気になる症状があれば、まずは専門の医療機関へご相談ください。

クリオピリン関連周期熱症候群の治療

この病気の治療は、つらい症状を和らげることが大きな目標です。 遺伝子の変化が原因のため、病気そのものをなくすことは難しいです。 しかし、お薬で炎症を上手にコントロールすることはできます。

治療の目的は、主に次の2つです。

  • 現在の症状を抑えること 熱や皮疹、関節の痛みなどを和らげ、 普段どおりの生活を送れるようにします。
  • 将来の合併症を防ぐこと 難聴や、腎臓の働きが悪くなるアミロイドーシスなどを、 予防することも非常に大切です。

治療の中心は、炎症の火種となる物質の働きを抑えるお薬です。 この物質は「インターロイキン-1β(IL-1β)」と呼ばれます。 このIL-1βが過剰に作られることで、様々な症状が引き起こされます。

主に使われるお薬

治療では、IL-1βの働きを直接ブロックするお薬が使われます。 日本では「カナキヌマブ」というお薬が代表的です。 このお薬は、体の中で増えすぎたIL-1βの働きを抑え込みます。 その結果、体の炎症をしずめ、症状を改善させる効果が期待できます。

病気のタイプ別の治療

治療法は、病気の重さや症状の出方によって異なります。 一人ひとりの状態に合わせて、最適な方法を選んでいきます。

病気のタイプ

主な治療法

家族性寒冷自己炎症性症候群

(軽症型)

・症状が出た時に、痛み止めやステロイドという炎症を抑えるお薬を短期間使うことがあります。

・発作の回数が多い場合や症状が強い場合は、カナキヌマブの使用を検討します。

・きっかけとなる寒さや冷たい刺激を避けることも大切です。

マックル・ウェルズ症候群

(中等症型)

・合併症を防ぐためにも、カナキヌマブによる治療が中心となります。

CINCA症候群 / NOMID

(重症型)

・症状が常にあり、全身に影響が出るため、カナキヌマブによる治療が中心となります。

治療の目標は、症状をコントロールして生活の質を高めることです。 そして、将来起こりうる合併症のリスクを減らすことが重要です。 専門の医師とよく相談しながら、ご自身に合った治療を進めましょう。