オスラー病

子どもの頃から繰り返す鼻血、ふと気がつくと唇や指先にできている消えない赤い点。ありふれた症状だと思っていませんか?もしかしたら、それは「オスラー病」という遺伝性の病気が隠れているサインかもしれません。

オスラー病は、全身の血管に異常が生じる国の指定難病で、日本では約5,000人から8,000人に1人が発症すると推定されています。症状は皮膚だけでなく、気づかないうちに肺や脳といった内臓の血管にも及ぶことがあり、早期の理解が重要です。

この記事では、オスラー病の詳しい症状から原因、診断方法、そしてレーザー治療をはじめとする最新の治療法までを分かりやすく解説します。ご自身やご家族に当てはまる点がないか、確認してみてください。

オスラー病の概要

オスラー病は、正式には「遺伝性出血性毛細血管拡張症」といいます。 遺伝により、からだ全体の血管に異常が起こりやすくなる病気です。

日本では約5,000人から8,000人に1人にみられるとされます。 患者さんは国内に約1万人いると推定されており、国の指定難病です。

オスラー病の主な特徴として、以下の3つが知られています。

  • 繰り返す鼻血 ほとんどの方にみられる、代表的な症状です。 子どもの頃から鼻血を何度も繰り返すことが多いです。
  • 皮膚や粘膜の赤い点(毛細血管拡張) 細い血管が異常に広がり、皮膚の表面に赤い点として現れます。 顔や唇、舌、指先などによく見られます。
  • 内臓の血管の異常(動静脈奇形) 本来は毛細血管でつながる動脈と静脈が、直接つながる異常です。 肺や脳、肝臓などにできることがあります。

これらの症状は、年齢を重ねるにつれて少しずつ現れることが多いです。 治療は、個々の症状を和らげることを目的とします。

例えば、皮膚にできる赤い点(毛細血管拡張)の治療が挙げられます。 専門家向けの治療指針でも、オスラー病による皮膚や粘膜の赤い点に対して、レーザー治療は有効な選択肢とされています。

オスラー病の種類

オスラー病は、原因となる遺伝子の違いによって、いくつかの種類(病型)に分けられます。 どの遺伝子に変化があるかで、症状の出やすい場所などが異なります。

代表的なのは「HHT1」と「HHT2」と呼ばれる2つのタイプです。 日本の患者さんでは、HHT1がHHT2よりも多いと報告されています。

  • HHT1
  • 原因遺伝子 ENG遺伝子
  • 特徴 肺や脳に血管のかたまり(動静脈奇形)ができやすい傾向があります。 そのため、定期的な胸のレントゲンや頭のMRI検査が重要になります。
  • HHT2
  • 原因遺伝子 ACVRL-1遺伝子
  • 特徴 肝臓に血管のかたまりができやすいです。 また、皮膚の赤い点(毛細血管拡張)がHHT1より多く見られます。

病型

主な原因遺伝子

血管のかたまり(動静脈奇形)ができやすい場所

HHT1

ENG遺伝子

肺、脳

HHT2

ACVRL-1遺伝子

肝臓

このほか、大腸にポリープができやすい「JP-HHT」というまれな種類もあります。

ご自身のタイプを把握することは、今後の検査や治療を考える上で大切です。 例えば皮膚の赤い点には、レーザー治療が有効な場合があります。 海外の専門家の治療指針でも、オスラー病の毛細血管拡張は治療対象です。

オスラー病の原因

オスラー病は、体の設計図である「遺伝子」の変化によって起こる病気です。 私たちの体は、この遺伝子の情報をもとにして正しく作られています。

この病気は「常染色体優性遺伝」という形式で伝わることが多いです。 これはご両親のどちらかがオスラー病の場合、お子さんには50%の確率で、 病気の原因となる遺伝子が伝わる可能性があることを意味します。

私たちの体には、丈夫でしなやかな血管を作るための指令システムがあります。 オスラー病は、この指令に関わる遺伝子に変化が起きることで発症します。

  • 主な原因遺伝子
  • ENG遺伝子
  • ACVRL1(別名 ALK-1)遺伝子
  • SMAD4遺伝子

これらの遺伝子は、血管の細胞が正しく成長するための伝言係のような役目です。 遺伝子に変化があると、この大切な伝言がうまく伝わらなくなります。

その結果、体のあちこちに弱くて出血しやすい血管ができてしまうのです。 この弱い血管が、皮膚に赤い点(毛細血管拡張)として現れることもあります。 海外の専門家の治療指針でも、このような血管の異常は治療対象とされています。

オスラー病の症状

オスラー病の症状は、体のどこにでも現れる可能性があります。 人によって症状の出方はさまざまで、診断の重要な手がかりになります。

1. くり返す鼻血 この病気で最も多く、患者さんの90%以上が経験する症状です。 ぶつけたりしていないのに、子どもの頃から鼻血を何度もくり返します。 20歳になるまでに、約8割の方にこの症状があらわれます。

2. 皮膚やねんまくの赤い点 唇や舌、顔、指先などに、1〜2mmほどの小さな赤い点ができます。 これは皮膚のすぐ下の細い血管が、異常に広がってしまうためです。 この症状は「毛細血管拡張(もうさいけっかんかくちょう)」と呼ばれます。

海外の専門家による治療指針でも、このような血管の異常は治療対象です。 症状を和らげるために、レーザー治療が行われることもあります。

3. 体の内側にできる血管の異常 外からは見えない体の内側にも、血管の異常ができることがあります。 動脈と静脈が直接つながる「動静脈奇形(どうじょうみゃくきけい)」です。 できる場所によって、次のような症状を引き起こします。

  • 肺 息切れや疲れやすさの原因になります。 胸のレントゲン写真で、偶然見つかることも少なくありません。
  • 脳 頭痛やけいれん、めまいなどを引き起こすことがあります。
  • 胃や腸 血管がもろく出血しやすいため、貧血の原因になります。 血液が混じった黒い便(タール便)が出ることもあります。

症状は軽いものから生活に影響が出るものまで幅広いです。 気になることがあれば、早めに専門の医療機関へ相談しましょう。

オスラー病の検査・診断

オスラー病の診断は、1つの検査だけで決まるわけではありません。 まるでパズルのピースを集めるように、いくつかの情報を組み合わせます。 症状や家族のことを聞き、国際的な基準と照らし合わせて判断します。

主に、次の4つの項目をもとに診断を進めます。 ご自身やご家族に当てはまるか、チェックしてみましょう。

【オスラー病の診断チェックリスト】

  • くり返す鼻血 特別な原因がないのに、自然に鼻血が何度も出ます。
  • 皮膚や口の中の赤い点 唇や舌、顔、指先などに、小さな赤い点が見られます。 これは「毛細血管拡張(もうさいけっかんかくちょう)」と呼ばれます。
  • からだの中の血管の異常 肺や脳、肝臓などに血管のかたまり(動静脈奇形)があります。
  • 家族にオスラー病の人がいる 血のつながったご家族に、オスラー病と診断された方がいます。

これらの項目のうち、いくつ当てはまるかによって診断されます。

当てはまる項目の数

診断

3つ以上

オスラー病(確実)

2つ

オスラー病の疑い

1つ以下

可能性は低い

診断のてがかりとなる皮膚の赤い点(毛細血管拡張)に対しては、 レーザー治療が有効な選択肢となることが専門家の指針でも示されています。

これらの項目を確かめるために、詳しい問診や検査を行います。 CTやMRIなどの画像検査で、目に見えない内臓の血管を調べます。 診断をはっきりさせるため、遺伝子を調べる検査を行うこともあります。

オスラー病の治療

オスラー病を根本から治す治療は、今のところまだありません。 そのため治療は、今ある症状を和らげることを目的とします。 これを「対症療法(たいしょうりょうほう)」と呼びます。

症状の出方は人それぞれなので、治療も一人ひとりに合わせます。 まるでオーダーメイドの服を作るように、治療計画を立てていきます。

【主な症状と治療法】

  • 鼻血(鼻出血) オスラー病で最も多い症状で、出血の程度により治療が変わります。
  • 軽い場合 血管を縮めるお薬や、軟膏をぬって対応します。
  • くり返す場合 レーザーで鼻の粘膜を焼いて固める治療を検討します。
  • 重い場合 鼻の粘膜を、体の別の場所の丈夫な皮膚に入れ替える手術もあります。
  • 皮膚や口の中の赤い点(毛細血管拡張) 顔や唇、指先などにできる赤い点です。 見た目が気になる場合、レーザー治療で改善が期待できます。 海外の専門家の治療指針でも、オスラー病による皮膚の血管の異常は、 レーザー治療の良い対象であると示されています。
  • 体の中の血管のかたまり(動静脈奇形) 体の内側にできた血管の異常には、専門的な治療が必要です。
  • 肺や脳 カテーテルという細い管を血管に入れ、異常な部分を詰める治療や、 手術、放射線治療などを組み合わせて行います。
  • お腹(胃や腸) 出血で貧血になりやすいため、鉄分を補うお薬を飲みます。 出血が多い場合は、胃カメラなどでレーザー治療を行うこともあります。

このように、治療法は症状や場所によってさまざまです。 ご自身の状態にどの治療が最適か、専門の医師とよく相談しましょう。