顔面骨骨折

交通事故やスポーツ、ふとした転倒など、私たちの日常には顔を強くぶつけてしまう危険が潜んでいます。その一撃が、パズルのように組み合わさった顔の骨を折る「顔面骨骨折」につながることがあります。ある研究では、顔面骨折の最も多い原因は交通事故であり、特に活動的な30代前半の男性に多いと報告されています。

このケガがもたらすのは、痛みや腫れだけではありません。「ものが二重に見える」「かみ合わせがずれ、うまく噛めない」といった生活に直結する機能の問題や、顔がへこむなどの見た目の変化を引き起こす可能性があります。決して他人事とは言えない、深刻なケガなのです。

この記事では、顔面骨折の代表的な種類から具体的な症状、そして「機能」と「見た目」の両方を取り戻すための治療法までを詳しく解説します。万が一の事態に備え、正しい知識を身につけましょう。

顔面骨骨折の概要

「顔面骨骨折」とは、その名の通り、顔にある骨が折れるケガです。 私たちの顔は、おでこや鼻、ほほ、あごといった骨でできています。 これらの骨は、まるでパズルのように組み合わさって顔の形を作ります。

顔面骨骨折は、交通事故やスポーツ、転んだ時などに起こります。 顔にとても強い力が加わることで、骨がその力に耐えられずに折れます。 ある研究では、顔面骨骨折の最も多い原因は交通事故でした。 また、比較的若い世代の、特に男性に多い傾向が報告されています。

治療の目的は、機能と見た目の両方を元通りにすることです。

  • 機能の回復 骨折すると、ものが二重に見えたり口が開きにくくなります。 かみ合わせが悪くなることもあり、食事に影響が出ることもあります。 これらの問題を改善し、生活への支障をなくすことを目指します。
  • 見た目の回復 顔のへこみやゆがみなど、変形してしまった部分を治します。 骨折した部分を、できるだけ元の状態に近づけることを目指します。

治療は形成外科や口腔外科が中心となり、複数の科が協力することも重要です。 骨は時間が経つと折れたまま固まってしまうため、ケガをしてから2週間以内に治療を始めることが一般的です。

顔面骨骨折の種類

「顔面骨骨折」と一言でいっても、顔にはたくさんの骨があります。 どの骨が折れるかによって、名前や現れる症状が異なります。 ここでは、代表的な顔面骨骨折の種類をみていきましょう。

骨折の名称

骨の場所

主な特徴

鼻骨骨折(びこつこっせつ)

鼻の骨

鼻血が出たり、鼻筋が曲がったりへこんだりします。

頬骨骨折(きょうこつこっせつ)

ほお骨

ほおが平たくなったり、口が開きにくくなったりします。

眼窩底骨折(がんかていこっせつ)

目のくぼみの底にある薄い骨

ものが二重に見えたり、目がくぼんだりすることがあります。

上顎骨骨折(じょうがくこつこっせつ)

上あごの骨

顔が平たくなったように見えたり、歯のかみ合わせがずれたりします。

下顎骨骨折(かがくこつこっせつ)

下あごの骨

歯のかみ合わせがずれ、口の開け閉めがうまくできなくなります。

前頭骨骨折(ぜんとうこつこっせつ)

おでこの骨

おでこがへこんだり、変形したりします。

インドのある病院の研究では、顔面骨折で受診した患者さんのうち、 半数近くがほお骨と上あごの骨が一緒に折れる骨折だったと報告されています。 顔は見た目だけでなく、食事や会話、呼吸など大切な機能を持っています。

そのため、治療は骨折の専門家である形成外科だけでなく、 口やあごの専門家(口腔外科)、耳や鼻の専門家(耳鼻咽喉科)など、 複数の科の医師がチームを組んで協力しながら進めることが重要です。

顔面骨骨折の原因

顔面骨骨折は、顔にとても強い力が加わることが直接の原因です。 私たちの普段の生活の中には、顔をケガする危険が隠れています。 インドのある病院の研究では、顔面骨折の主な原因は交通事故でした。

具体的には、次のような場面で顔面骨骨折は起こりやすいです。

  • 交通事故 車やバイク、自転車の事故で顔を強くぶつけてしまうことです。 とても大きな力が加わるため、複数の骨が折れることもあります。
  • 転んだり、落ちたりすること(転倒・転落) つまずいて顔から転んだり、階段から落ちたりして骨折します。 特にご高齢の方は、骨がもろくなっていることがあるため、 少しの転倒でも骨折につながる可能性があり注意が必要です。
  • スポーツでのケガ 野球のボールが顔に当たる、サッカーで相手選手とぶつかるなど、 スポーツ中の事故も大きな原因です。 特に、ボールが目に当たって目の周りの薄い骨が折れる 「眼窩底骨折(がんかていこっせつ)」は、球技でよく見られます。
  • 殴られたりすること(暴力・ケンカ) 人とのトラブルで顔を殴られるなど、強い衝撃で骨折します。

ある研究では、顔の骨を折る人は男性に多く、 平均年齢は30代前半だったという報告もあります。 これは、活動的な若い世代が事故やスポーツのリスクに さらされやすいことを示しているのかもしれません。

このように顔面骨骨折の原因は様々ですが、 その多くが予期せぬ事故によるものなのです。

顔面骨骨折の症状

顔を強くぶつけた後、いつもと違う変化があれば骨折のサインかもしれません。 骨が折れた場所によって、様々な症状があらわれます。 痛みや腫れだけでなく、機能や感覚の変化にも注意を向けましょう。

顔全体にあらわれる症状

まず、骨折した部分には強い痛みや腫れ、あざが見られます。 しかし、腫れがひどいと骨の形の変化が分かりにくいこともあります。 見た目以外にも、次のような機能の問題が起こることがあります。

  • 口が開けにくい、うまく噛めない あごの骨が折れると、口の動きが悪くなり食事が難しくなります。 動物の研究でも、ウサギが顔の骨を折ると食欲がなくなると報告されており、 これは人間でも見られる重要なサインです。
  • 歯のかみ合わせがおかしくなる 上下の歯が普段通りに噛み合わなくなり、違和感が出ます。

骨折した場所ごとの特徴的な症状

顔の骨はパーツに分かれており、折れた骨によって特有の症状が出ます。 インドのある研究では、ほお骨と上あごの骨が一緒に折れるケースが 最も多かったと報告されており、複数の症状が重なることもあります。

骨折した場所

主な症状の例

おでこの骨(前頭骨)

・おでこがへこんで見える

鼻の骨(鼻骨)

・鼻血が出る<br>・鼻の形が変わる(曲がる、つぶれる)<br>・鼻がつまる

目のまわりの骨(眼窩)

・ものが二重に見える<br>・目がくぼんだように見える<br>・ほっぺや上唇がしびれる(感覚が鈍くなる)

ほっぺの骨(頬骨)

・ほっぺがへこんで平たく見える<br>・ほっぺや上唇、歯ぐきがしびれる

あごの骨(上顎骨・下顎骨)

・歯のかみ合わせがずれる<br>・顔が平たくなったり、長く伸びたように見える

これらの症状は、一つだけでなく複数が同時にあらわれることもあります。 顔をぶつけた後、見た目や感覚、かみ合わせに少しでも違和感があれば、 できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

顔面骨骨折の検査・診断

顔を強くぶつけて骨折が疑われる場合、病院ではまず問診を行います。 いつ、どこで、どのようにケガをしたのかを詳しくお聞きします。 その後、顔の腫れや変形などを目で見て、手で優しく触って確認します。

より正確に骨の状態を知るためには、中をのぞく画像検査が必要です。

  • X線(レントゲン)検査 骨全体の様子を大まかに確認するための、基本的な検査です。
  • CT検査 顔の骨は複雑な形をしているため、CT検査で詳しく調べます。 体を輪切りにした画像を撮影し、骨のずれを正確に把握します。

近年、CT画像とAI(人工知能)を組み合わせる技術が進んでいます。 ある研究では、AIが骨折の場所を速く正確に見つける技術が開発されました。 この技術により、診断時間が大幅に短縮されることが期待されています。 骨折の様子を3Dの立体画像で、誰にでも分かりやすく示せるようになります。

また、骨折した場所によっては、次のような専門的な検査も行います。

  • 眼の検査 目の周りの骨折では、物が二重に見えることがあります。 そのため、眼科で視力や眼球の動きなどを詳しく調べます。
  • 歯のかみ合わせの確認 あごの骨を骨折すると、歯のかみ合わせがずれることがあります。 そのため、歯科で口の状態をしっかり確認することが大切です。

これらの検査結果を総合的にみて、今後の治療の作戦を立てていきます。

顔面骨骨折の治療

顔面骨骨折の治療は、二つの大きな目的を持って行われます。 一つは「機能の回復」、もう一つは「見た目の回復」です。 折れてしまった骨を、できるだけ元の状態に戻すことを目指します。

  • 機能の回復 「しっかり噛む」「口を開ける」「ものを見る」といった、 顔が持つ大切な働きを、元通りに使えるようにします。
  • 見た目の回復 顔のへこみやゆがみなど、形が変わってしまった部分を、 きれいに整えていきます。

治療法は、骨のずれの大きさや場所によって変わります。 骨のずれがごくわずかなら、手術をせずに安静にする方法もあります。 しかし、骨が大きくずれている場合は手術で治すことが一般的です。

手術では、口の中や髪の生え際など、傷が目立たない場所を切ります。 そして、ずれた骨をパズルのように正しい位置へ戻します。 戻した骨は、「プレート」という小さな金属の板とネジで固定します。

最近では、口の中から「内視鏡」という細いカメラを入れる手術も増えました。 ある研究では、この方法だと顔の表面に傷が残らないと報告されています。 顔を動かす大事な神経を傷つける危険も低くなる可能性があります。

どんな治療法でも、最も大切なのは「機能の回復」です。 特に、治療後にしっかり食事がとれるよう、かみ合わせを治すことは重要です。 動物の研究でも、ウサギは顔の骨を折ると食欲がなくなると報告されています。 きちんと食べられるように治すことは、人間にとっても非常に大切なのです。

骨折した場所

主な治療法

鼻の骨

鼻の中から器具を使って骨を整え、ギプスで固定します。

ほおの骨

口の中などを切り、骨をプレートという金属の板で固定します。

目の周りの骨

まぶたの裏などを切り、ずれた骨を元に戻します。

あごの骨

口の中を切り、骨をプレートで固定します。<br>手術後に、あごを固定することもあります。

治療法は、骨折の状態によって一人ひとり異なります。 専門の医師とよく相談し、自分に合った治療法を決めていきましょう。