顔面けいれん

目の周りがピクピクする、そんな経験はありませんか?「ただの疲れ目だろう」と見過ごしがちですが、それはご自身の意思とは関係なく顔が動いてしまう「顔面けいれん」という病気のサインかもしれません。命に別状はありませんが、人目が気になって会話がしづらくなったり、生活の質を下げてしまったりと、心にも負担をかけることがあります。

しかし、ご安心ください。この症状には効果的な治療法があり、ある研究では注射による治療で約88%もの方に改善が見られたと報告されています。けいれん自体が軽くなるだけでなく、症状が原因で起こる気分の落ち込みや不安を和らげる効果も期待できるのです。

この記事では、顔面けいれんの詳しい原因や症状、間違えやすい他の病気との違い、そしてあなたに合った治療の選択肢までを分かりやすく解説します。気になる症状の正体を知り、不安を解消するための一歩を踏み出しましょう。

顔面けいれんの概要

「顔面けいれん」とは、ご自身の意思とは関係なく、 顔の筋肉が勝手にピクピクと動いてしまう病気です。 多くの場合、顔の左右どちらか片側に症状が出ます。

この病気の主な特徴は以下のとおりです。

  • 起こる場所 顔の片側に症状があらわれることがほとんどです。
  • 始まりやすい部位 目の周りの軽いけいれんから始まることが多いです。
  • 症状の広がり 時間とともに、頬や口の周りへとけいれんが広がることがあります。
  • 生活への影響 命に別状はありませんが、見た目や不快感が気になり、 生活の質を下げてしまうことがあります。

はじめは「疲れ目かな?」と感じるような些細な症状でも、 次第にけいれんの回数が増えたり、範囲が広がったりします。 そのため、ご自身で判断せず、気になる症状があれば受診をおすすめします。

幸いなことに、顔面けいれんには症状を和らげるための治療法があります。 ある研究では、けいれんを抑える注射治療は高い有効性を示し、 症状に伴う気分の落ち込みや不安を軽くする効果も報告されました。

顔面けいれんの種類

顔の筋肉が勝手にピクピク動く症状には、いくつかの種類があります。 原因や適した治療法が違うため、まず種類を知ることが大切です。

最も一般的な「片側顔面けいれん」

顔のけいれんで最も多いのが「片側顔面けいれん」です。 その名の通り、顔の右か左のどちらか片側だけに症状が出ます。

  • 症状の始まりと広がり 多くの場合、目の周りの軽いピクつきから始まります。 時間とともに、同じ側の頬や口元へと広がっていきます。

この症状には、けいれんを和らげる注射による治療が有効です。 ある研究では、この治療で約88%の方に改善が見られました。 けいれん自体が軽くなるだけでなく、症状が原因で起こる 気分の落ち込みや不安を和らげる効果も報告されています。

顔面けいれんと間違えやすい病気

顔のピクピクには、ほかにも似た症状を示す病気があります。 自己判断は難しいので、下の表を参考にしてみてください。

症状の種類

主な特徴

眼瞼(がんけん)けいれん

両方の目の周りが同時にけいれんします。<br>まぶたが開きにくくなることもあります。

眼瞼ミオキミア

疲れやストレスで、片方のまぶたの一部が<br>一時的にピクピクする状態です。

チック症

顔をしかめるなど、同じ動きを繰り返します。<br>顔以外の場所に出ることもあります。

これらの症状は、それぞれ原因や対処法が異なります。 気になる症状があれば、まずは専門の医療機関に相談し、 正確な診断を受けることが重要です。

顔面けいれんの原因

顔の筋肉が勝手にピクピク動く原因は、 脳の奥深くにある「神経のコード」のトラブルです。

顔を動かすための命令は「顔面神経」というコードを通ります。 このコードのすぐそばを、脳の血管が走っています。 顔面けいれんの多くは、この血管が神経を圧迫して起こります。

水道のホースがコードを踏んでしまうと電気がショートするように、 神経に間違った信号が流れ、けいれんが起きてしまうのです。 特に、年齢を重ねると血管が硬くなり(動脈硬化)、 神経を圧迫しやすくなるため、中高年の方に多く見られます。

まれに、脳にできた「できもの(腫瘍)」などが原因の場合もあります。 そのため、原因を正確に調べることがとても大切です。

治療の経過に関わる生活習慣

顔面けいれんの原因そのものではありませんが、 治療後の経過に影響する生活習慣もわかってきました。 ある研究では、次のような点が報告されています。

  • 高血圧や心臓の手術歴 治療後に、一時的に顔の動きが悪くなる 「顔面神経麻痺」が起こるリスクと関連があります。
  • タバコを吸う習慣 治療後の「聞こえの悪化」を 早めてしまう可能性が指摘されています。

このように、血圧の管理や禁煙に取り組むことは、 治療をより安全に進める上で、とても重要になります。

顔面けいれんの症状

顔面けいれんの症状は、とても特徴的なあらわれ方をします。 はじめは、目の周りが少しピクピクする程度で、 「疲れ目かな?」と感じるような、ささいなことが多いです。

しかし、時間とともに症状はゆっくりと広がっていきます。 目の周りから始まったけいれんが、同じ側の頬や口元、 あごの筋肉にまで及ぶようになります。 重くなると一日中けいれんし、目が開けにくくなることもあります。

▼こんな時に症状が出やすい・強くなりやすい

  • 緊張している時 人前で話す時など、無意識に顔に力が入ると出やすくなります。
  • ストレスや疲れがたまっている時 体だけでなく、神経が疲れているサインとして症状が強まります。
  • ぎゅっと目をつぶった後 洗顔やメイクなど、顔の筋肉を強く動かした後に誘発されます。
  • 人と話している時 自然な会話や食事で表情を作るたびに、けいれんが起きてしまいます。

このようなけいれんは、見た目の問題だけではありません。 人目が気になって会話がしづらくなったり、気分が落ち込んだり、 強い不安を感じたりと、心にも大きな負担をかけます。

ある研究では、けいれんを抑える治療によって、 うつ病や不安といった精神的なつらさが軽くなったと報告されました。 これは、けいれん自体が生活の質を大きく下げる原因である証拠です。 命に関わる病気ではありませんが、放置せず専門医に相談しましょう。

顔面けいれんの検査・診断

顔の筋肉がピクピクする症状で受診されると、 まずはお話を詳しく伺う「問診」から始まります。 この問診は、正しい診断への大切な第一歩です。

▼お医者さんが確認するポイント

  • けいれんは顔の片側だけ? 顔面けいれんは、ほとんどの場合、 顔の左右どちらか片側だけに起こります。
  • 目の周りから始まった? 目の周りの軽いピクつきから始まり、 だんだん頬や口元へ広がるのが特徴です。
  • どんな時に症状が出やすい? 緊張した時や、ぎゅっと目をつぶった後など、 症状が出やすい状況があるかを確認します。
  • 寝ている間も出ている? 睡眠中など、無意識の時にも出るのが、 この病気の特徴の一つです。

これらの問診で顔面けいれんが疑われる場合、 原因を特定するため、さらに詳しい検査を行います。

▼原因を調べるための検査

検査方法

目的

MRI検査

磁気の力で脳の断面を撮影する検査です。<br>顔の筋肉を動かす「顔面神経」というコードに、<br>「血管」がぶつかっていないかを確認します。<br>まれな脳の病気が隠れていないかもわかります。

診断がつき、根本的な治療として手術を考える場合、 術後の「めまい」が課題になることがあります。 しかし、このような症状を和らげる研究も進んでいます。

ある研究では、手術後に皮膚の上から優しい電気で 特定の場所を刺激する治療法が試されました。 その結果、治療を受けた人は、受けなかった人と比べ 手術後のめまいの発生が抑えられたと報告されています。 このように、より安心して治療を受けられるような 取り組みが続けられています。

顔面けいれんの治療

顔面けいれんの治療は、大きく2つの考え方があります。 原因を根本から治す方法と、つらい症状を和らげる方法です。 ご自身の症状の重さや生活に合わせて、治療法を選びます。

主な治療法は、注射、手術、飲み薬の3つです。 それぞれの特徴を理解し、医師と相談して決めましょう。

注射で症状を和らげる(ボツリヌス治療)

けいれんしている筋肉に、筋肉の緊張を和らげるお薬を注射します。 外来で受けられるため、体への負担が少ない治療法です。

ある研究では、この注射治療で約88%の方に改善が見られました。 けいれんが減るだけでなく、症状が原因で起こる気分の落ち込みや、 不安な気持ちが軽くなる効果も報告されています。

ただし、効果は3〜4ヶ月ほどで薄れていきます。 そのため、症状を抑え続けるには定期的な注射が必要です。 まれに、まぶたが一時的に下がってしまう副作用もあります。

手術で原因を取り除く(神経血管減圧術)

顔の筋肉を動かす神経を圧迫している血管を離す手術です。 原因そのものにアプローチするため、治る可能性が高い治療法です。 しかし、入院が必要で、体への負担も大きい方法です。

手術のあとには「めまい」が起こることがあります。 最近では、このめまいを予防するための研究も進んでいます。 ある研究では、手術後に皮膚の上から優しい電気で刺激したところ、 めまいの発生が抑えられたと報告されました。 より安心して手術を受けられるような工夫が続けられています。

飲み薬でけいれんを抑える(薬物療法)

神経の異常な興奮を抑える飲み薬で、けいれんを軽くする方法です。 主に、てんかんの治療に使われるお薬が用いられます。 しかし、効果には個人差があり、眠気などの副作用が出ることもあります。

治療法

特徴

メリット

デメリット

ボツリヌス注射

筋肉の動きを一時的に和らげる

日帰りで治療できる<br>精神的な負担も軽くなる

定期的な通院が必要<br>副作用の可能性がある

手術

原因を根本から取り除く

治る可能性が高い

入院が必要<br>合併症のリスクがある

薬物治療

飲み薬でけいれんを抑える

手術や注射が不要

効果が限定的<br>副作用の可能性がある