円錐角膜

「メガネを新しくしても、すぐに見えにくくなる」「光が妙に眩しく、物が歪んだり二重に見えたりする」。その見え方の変化、単なる近視や乱視の進行だと思っていませんか?もしかしたら、角膜が変形する「円錐角膜」という病気が原因かもしれません。

この病気は10代で発症することが多く、特にアレルギー性鼻炎の方はそうでない方に比べて発症リスクが約1.7倍高いという研究結果もあります。目のかゆみからつい目をこする癖が、進行を早める一因とも考えられています。

この記事では、円錐角膜の詳しい症状から原因、ご自身の状態を知るための検査、そして進行を抑える最新の治療法までを分かりやすく解説します。大切な目の健康を守るため、まずは正しい知識を身につけましょう。

円錐角膜の概要

円錐角膜とは、目の黒い部分にある透明な膜「角膜」の病気です。 本来はきれいなドーム状の角膜が、だんだんと薄くなります。 そして、円錐のように前方へ突き出た形に変形していきます。

角膜は、光を集めてピントを合わせるレンズの役割をしています。 形が崩れると光がうまく網膜に届かず、見え方に影響が出ます。

  • 主な影響
  • 近視や乱視が強くなる
  • 物が歪んで見えるようになる
  • 視力が低下していく

多くの場合、10代の思春期ごろに発症することが多いです。 その後、30代から40代ごろに進行がゆるやかになる傾向があります。

原因はまだ不明ですが、アレルギー体質との関連がわかっています。 ある複数の研究をまとめた分析によると、興味深い結果が出ています。 アレルギー性鼻炎の方は、そうでない方と比べて円錐角膜を発症する可能性が、統計的に約1.7倍高いことが示されました。 アレルギーによる目のかゆみで、つい目を強くこする癖がありませんか。 角膜をこする物理的な刺激が、病気の進行を早める一因と考えられます。

円錐角膜の種類

円錐角膜は、人によって角膜の変形の仕方や進み方が異なります。 ご自身の状態がどのタイプかを知ることが、治療計画の第一歩です。 主に「進行のスピード」と「角膜の形」の2つの見方で分類されます。

進行のスピードによる分類

角膜のカーブの強さを「ジオプター(D)」という単位で測ります。 これは、メガネやコンタクトレンズの度数のようなものと考えてください。 この数値によって、病気の進行度を判断します。

分類

角膜のカーブの強さ

軽度

45D 未満

進行期

45D以上 52D以下

重度

52D を超える

数値が大きくなるほど、角膜のカーブがきついことを意味します。 それだけ近視や乱視が強くなり、見え方への影響も大きくなります。

角膜の形による分類

角膜が前に突き出ている部分の形や場所によっても分けられます。 角膜のどこが、どのように変形しているかでタイプが異なります。

  • 乳頭状(にゅうとうじょう) 突き出ている部分が比較的小さく(直径5mmほど)点のようです。 角膜の真ん中あたりにできることが多いタイプです。
  • 楕円状(だえんじょう) 突き出ている部分がより大きく、楕円のような形をしています。 角膜の中央よりやや下側に見られることが多いです。
  • 球状(きゅうじょう) 角膜の大部分(75%以上)が変形してしまっている状態です。

これらの分類は、角膜形状解析という専門の検査で正確に診断されます。 どのタイプに当てはまるかを知ることで、一人ひとりに合った治療法を検討していきます。

円錐角膜の原因

円錐角膜がなぜ起こるのか、その原因は一つではありません。 いくつかの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。 主な原因として、以下の3つが重要視されています。

  • 遺伝的な要因 生まれつきの体質が関係していると考えられています。 ご家族に円錐角膜の方がいる場合、発症率は6〜19%とされ、 一般よりも発症しやすい傾向があることがわかっています。
  • アレルギーと物理的な刺激 アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎をお持ちの方に多いです。 ある信頼性の高い研究では、重要な報告がされています。 複数の研究結果を統合して分析した結果、 アレルギー性鼻炎の方は、そうでない方と比べて、 円錐角膜になる可能性が約1.7倍高いことが示されました。 かゆみで目をこする物理的な刺激が角膜に負担をかけ、 病気の進行を早める一因と考えられています。
  • 角膜の構造的な弱さ 角膜の丈夫さを保つコラーゲンという線維があります。 このコラーゲンを分解する酵素の働きが活発な場合や、 逆に分解を抑える力が弱い体質が関係するとも言われます。 角膜が構造的にもろくなることで、変形しやすくなります。

円錐角膜の症状

円錐角膜の症状は、病気の進み具合によってさまざまです。 はじめは軽い近視や乱視と似ているため、ご自身では気づきにくいかもしれません。 「見え方がおかしいな」と感じて眼科を受診し、検査で初めてわかることも多いです。

病気が少しずつ進むと、次のような特徴的な症状が現れます。 ご自身の見え方と比べて、チェックしてみてください。

【円錐角膜の主な症状チェックリスト】

  • 物が歪んで見える・二重に見える 片方の目で見たときでも、物が二重や三重にぶれて見えるのが特徴です。 (これを専門的には「片眼複視」と呼びます) 信号や月など、暗い背景に明るい点がある場面で特に目立ちます。
  • 光を異常に眩しく感じる(羞明:しゅうめい) 太陽光や部屋の照明が、以前よりずっと眩しく感じます。 光の周りに、もやがかかったような輪が見えることもあります。
  • 夜、物が見えにくくなる 特に夜間の視力が落ちるのが特徴の一つです。 暗い場所では瞳が大きくなるため、角膜の歪んだ部分をより広く使い、 光がうまく集まらず、見え方が悪化するためです。
  • 視力が下がり続ける メガネやコンタクトレンズを新しく調整しても、すぐに合わなくなります。 どんなに度数を合わせても、はっきりと見えないと感じることが増えます。

これらの見え方の変化に加えて、目の疲れや、コンタクトレンズがずれやすくなる、外れやすくなるといった症状が出ることもあります。

もし病気がさらに進行すると、「急性水腫(きゅうせいすいしゅ)」という状態になることがあります。角膜の非常に薄くなった部分が裂け、突然の強い痛みと共に視界が白く濁る症状です。これは緊急の対応が必要なため、気になる症状があれば自己判断せず、すぐに眼科へご相談ください。

円錐角膜の検査・診断

円錐角膜の診断は、まず患者さんのお話を聞くことから始まります。 見え方の変化やアレルギーの有無などを詳しく確認する「問診」です。 その後、視力検査や角膜の形を調べる専門的な検査を組み合わせます。

問診では、アレルギー体質かどうかも診断の参考になります。 ある複数の研究をまとめた分析結果を見てみましょう。 アレルギー性鼻炎の方は、そうでない方と比べて円錐角膜になる可能性が、統計的に約1.7倍高いことが示されています。

問診の後は、目の状態を詳しく調べるために、次のような検査を行います。

検査の種類

検査でわかること

視力検査

メガネなどで矯正しても、はっきりと見えない場合に病気を疑うきっかけになります。

細隙灯顕微鏡検査

顕微鏡で角膜を拡大し、円錐角膜に特徴的な角膜のしわや鉄分の沈着がないかを調べます。

角膜形状解析検査

角膜の形を地図のように色分けして表示します。ごく初期の円錐角膜を見つけるために非常に重要です。

特に重要なのが、角膜形状解析検査です。 この検査は「角膜トポグラフィ」とも呼ばれています。 角膜の表面の形を、高低差を示す地図のように色で表示します。 これにより、角膜のどの部分が、どのくらい前に出ているかを正確に測定できます。

自覚症状がほとんどない、ごく初期の円錐角膜の発見にもつながります。 これらの検査結果をもとに、医師が診断を確定します。 見え方に気になる変化があれば、早めに眼科を受診することが大切です。

円錐角膜の治療

円錐角膜の治療は、病気の進み具合に合わせて最適な方法を選びます。 治療の目的は主に2つです。 1つは「見え方を良くすること」、もう1つは「病気の進行を抑えること」です。

治療は、主に以下の3つのステップで進めていきます。 一人ひとりの状態に合わせて、これらの治療を組み合わせていきます。

治療の目的

主な治療法

①見え方の調整

メガネ、コンタクトレンズ(ソフト・ハード)

②進行を止める

角膜クロスリンキング

③角膜の形を整える

角膜内リング、角膜移植

① 見え方の調整(視力矯正)

ごく初期の段階では、メガネやソフトコンタクトレンズで見え方を調整します。 しかし、角膜の歪みが強くなると、これらでは十分な視力が得られません。

その場合は、硬い素材でできたハードコンタクトレンズが有効です。 レンズが角膜のデコボコした形を覆い、涙がその隙間を満たします。 これにより、光の通り道が整えられ、クリアな視界を得やすくなります。

② 進行を止める(角膜クロスリンキング)

進行性の円錐角膜に対しては、進行を食い止める治療が重要です。 角膜クロスリンキングは、角膜の強度を高めるための治療法です。

  • 治療の仕組み ビタミンの一種(リボフラビン)を点眼し、紫外線を当てます。 これにより、角膜の主成分であるコラーゲン線維の結びつきが強くなります。 結果として、角膜が硬くなり、病気の進行を抑える効果が期待できます。

紫外線の当て方には、続けて当てる方法と、休み休み当てる方法(パルス法)があります。 複数の研究結果を分析した報告によると、興味深いことがわかっています。 パルス法は、従来の連続で照射する方法と比べて、効果に大きな差はないと示唆されています。 どちらの方法でも、角膜の進行を抑える効果が期待できると考えられます。 この治療は、日本では公的医療保険が使えない自費診療となります。

③ 角膜の形を整える(外科的治療)

コンタクトレンズの装着が難しくなった場合に、手術を検討します。

  • 角膜内リング 角膜の中に、透明なリング状のプレートを挿入する方法です。 前に突き出た角膜の形を、より平らに近づけて歪みを軽くします。
  • 角膜移植 最も進行した重症例に行われる方法です。 変形したご自身の角膜を取り除き、提供された透明な角膜と交換します。

また、アレルギーなどで目がかゆい方は、目をこすらないことが大切です。 目をこする物理的な刺激は、病気の進行を早める一因と考えられます。 かゆみを抑える点眼薬などを使うことも、重要な治療の一つです。