シラミ症
「シラミ」と聞くと、「不潔な環境だからうつる病気」だと思っていませんか?実はその考えは大きな誤解です。シラミは衛生状態に全く関係なく、髪の接触やタオルの共用など、ごく身近な場面で誰にでも感染する可能性があります。毎日シャンプーをしていても、決して安心はできません。
特に注意したいのが、シラミが頭だけでなく「まつ毛」に寄生するケースです。この場合、見た目がただの目の炎症(眼瞼炎)と非常によく似ているため見過ごされやすく、気づかずに放置してしまうと角膜炎といった、より重い目の病気を引き起こす危険性も潜んでいます。
この記事では、そんな身近に潜むシラミ症の正しい知識を解説します。種類ごとの原因や特徴的な症状、そして効果的な治療法まで詳しくご紹介しますので、ご自身やご家族に心当たりがないか確認してみてください。
シラミ症の概要
シラミ症とは、シラミという小さな虫が人の体に寄生し、強いかゆみを引き起こす皮膚の病気です。主に頭の髪の毛や衣類、陰部の毛などにすみつきます。
「シラミ」と聞くと、不潔な環境が原因だと思われがちですが、これは必ずしも正しくありません。毎日お風呂に入って清潔にしていても、人との接触やタオル、くしなどの共用で誰でも感染する可能性があります。
シラミにはいくつかの種類がいて、寄生する場所が異なります。
- アタマジラミ
- 主に頭の髪の毛に寄生します。
- コロモジラミ
- 衣類や寝具にひそみ、皮膚から血を吸います。
- ケジラミ
- 主に陰部の毛に寄生します。
特に注意したいのが、ケジラミがまれに「まつ毛」に寄生するケースです。この場合、目のふちが赤くなったり、かゆみが出たりするため、ただの目の炎症(眼瞼炎:がんけんえん)と間違われやすいことがあります。
もし、シラミの寄生に気づかず放置してしまうと、角膜炎や結膜炎といった、より重い目の病気につながる可能性もあるため注意が必要です。このようにシラミ症は、体のさまざまな場所に症状を引き起こす、身近な病気の一つです。
シラミ症の種類
人に寄生するシラミは、主に3つの種類に分けられます。 それぞれが好む場所や特徴が違うため、正しい知識を持つことが大切です。
|
種類 |
主に寄生する場所 |
大きさの目安 |
特徴・感染経路 |
|
アタマジラミ |
頭髪(とくに後頭部や耳の後ろ) |
約3mm |
髪の毛の接触や、帽子、ブラシの共用で感染します。 専門的には「頭シラミ症」と呼ばれます。 清潔さに関係なく、お子さまの間で集団発生しやすいです。 |
|
コロモジラミ |
衣類の縫い目や寝具 |
約3mm |
不衛生な環境で発生しやすく、衣類を介してうつります。 日本ではまれですが、発疹チフスなどの病気を運ぶことがあります。 |
|
ケジラミ |
陰毛、肛門周囲の毛 |
約1~2mm |
主に性的な接触で感染します。 まれに胸毛やまゆ毛、そして「まつ毛」に寄生することがあります。 |
特に注意したい「まつ毛のケジラミ」
ケジラミがまつ毛に寄生するケースは注意が必要です。 これは「睫毛(しょうもう)ケジラミ症」と呼ばれます。
この状態は、まぶたが赤く腫れたりかゆくなったりするため、ただの炎症(眼瞼炎:がんけんえん)と間違われやすいのが特徴です。そのため診断が見逃されることも少なくありません。
もし放置してしまうと、角膜炎や結膜炎といった二次的な目の病気を引き起こす可能性があります。目の周りのかゆみや違和感が続く場合は、自己判断せずに眼科や皮膚科を受診しましょう。
シラミ症の原因
シラミ症は、「シラミ」という虫が人の体にすみつき、血を吸うことで起こります。 「不潔だからうつる」というイメージが強いですが、それは大きな誤解です。
シラミがうつる主な原因は、人との直接的な接触や、物を一緒に使うことです。 シラミの種類によって好む場所やうつり方が違うため、正しい知識を持ちましょう。
|
シラミの種類 |
主な原因 |
|
アタマジラミ |
・髪と髪が直接ふれあうこと ・帽子やブラシ、タオルの共用 |
|
コロモジラミ |
・シラミがついた服や寝具の共用 ・人が密集した不衛生な環境 |
|
ケジラミ |
・主に性的な接触 ・下着やタオル、寝具の共用 |
アタマジラミは、衛生状態や家庭環境に関係なく、誰にでもうつる可能性があります。 毎日しっかりシャンプーをしていても、学校などで頭を寄せ合って遊ぶと感染します。 そのため、特に小さなお子さまの間で集団発生しやすいのが特徴です。
一方、コロモジラミやケジラミは、生活環境が感染を広げる一因になります。 特にコロモジラミは、不衛生で人が密集した環境で発生しやすいことが知られています。
ケジラミの主な感染経路は、性的な接触です。 このシラミは動きがとても遅く、1日に10cmほどしか移動できません。 そのため、陰毛が直接ふれあうような、とても近い距離での接触によってうつります。
シラミ症の症状
シラミ症の主な症状は、シラミが血を吸うときの唾液に対する体の反応で起こる「強いかゆみ」です。 私たちの体は、シラミの唾液を「異物だ」と判断し、アレルギー反応を起こしてしまいます。 この反応が、我慢できないほどのかゆみを引き起こす原因です。
しかし、シラミの種類によって、症状が出る場所や特徴は少しずつ違います。 特にアタマジラミの場合、お子さまはかゆみをうまく言葉で伝えられないこともあります。 そのため、しきりに頭をポリポリとかいているだけに見えることもあるので注意が必要です。
シラミの種類ごとの主な症状は、以下の表のとおりです。
|
シラミの種類 |
主な寄生場所 |
特徴的な症状 |
|
アタマジラミ |
頭髪(特に後頭部や耳の後ろ) |
・頭皮の強いかゆみ ・かきすぎて皮膚が傷つき、湿疹や細菌感染を起こすことがある |
|
コロモジラミ |
衣類の縫い目が触れる皮膚(肩、お腹、お尻など) |
・虫刺されのような赤い点状の穴 ・強いかゆみや、じんましん |
|
ケジラミ |
陰毛、肛門周りの毛 |
・陰部のかゆみ ・皮膚にできる青みがかった灰色のシミ ・下着につく黒っぽいシミ(シラミのフン) |
特に注意したい「まつ毛のケジラミ」
まれにケジラミがまつ毛に寄生することがあり、これを「Phthiriasis palpebrarum(睫毛ケジラミ症)」と呼びます。 この場合、目の周りにひどいかゆみや充血、ヒリヒリした痛みを感じることがあります。
この症状は、まぶたの炎症である「眼瞼炎(がんけんえん)」と見た目がとても似ています。 そのため、ただの目の病気だと間違われて、診断が見逃されてしまうことも少なくありません。 もし放置してしまうと、角膜炎や結膜炎といった、より重い目の病気につながる可能性もあります。
気になる症状があれば、「これくらい大丈夫」と自己判断せずに、早めに医療機関へご相談ください。
シラミ症の検査・診断
シラミ症の診断は、かゆみの原因となっているシラミの成虫や卵を直接見つけることで確定します。虫探偵のように、症状が出ている場所をじっくり観察して、シラミがいる証拠を探し出すことが基本となります。
シラミの種類によって隠れている場所が違うため、探し方にもそれぞれコツがあります。
|
種類 |
主な確認場所 |
探し方のポイント |
|
アタマジラミ |
頭髪(特に後頭部、耳の後ろ) |
・濡らした髪を目の細かいくしですく ・成虫より卵の方が見つけやすい |
|
コロモジラミ |
衣類や寝具の縫い目 |
・肌ではなく、身の回りのものを調べる |
|
ケジラミ |
陰毛、肛門周囲の毛、まつ毛など |
・直接目で見る ・下着についた黒っぽいシミも手がかり |
アタマジラミの探し方
アタマジラミは、髪の毛専用の目の細かい「すき櫛」を使って探します。髪を濡らすとシラミの動きが鈍くなるため、より見つけやすくなります。特に卵を産みつけやすい後頭部や耳の後ろは、念入りに根元から毛先に向かってとかしましょう。
成虫よりも、髪にしっかりくっついた灰色がかった白い卵の方が見つかりやすいです。これは、メスの成虫が1日に3~5個も卵を産むため、卵の数が圧倒的に多いからです。
コロモジラミとケジラミの探し方
コロモジラミは人の肌ではなく、衣類や寝具にひそむため、下着やシャツの縫い目を調べます。一方、ケジラミは陰毛などを直接目で見て探します。下着に付いた黒っぽいシミはシラミのフンで、これも診断の大切な手がかりです。
特に注意したい「まつ毛のケジラミ」
ケジラミがまつ毛に寄生すると、まぶたの炎症(眼瞼炎)と症状がよく似ているため、診断が見逃されがちです。クリニックでは、まつ毛ダニ(デモデックス症)など、他の病気との見きわめも重要になります。放置すると角膜炎などを起こす可能性もあるため、自己判断はせず、早めに皮膚科や眼科を受診してください。
シラミ症の治療
シラミ症の治療は、虫の種類に合わせていくつかの方法を組み合わせます。 基本は「お薬で退治する」「物理的に取り除く」「環境を清潔にする」ことです。 これらを根気よく続けることで、しつこいシラミをしっかり駆除できます。
薬剤を使った治療
アタマジラミとケジラミの治療では、お薬を使うのが一般的です。 薬局やドラッグストアで買える、シャンプーやパウダータイプのお薬が中心です。
- お薬を使う時の大切なポイント
- 成虫には効果がありますが、硬い殻に守られた卵には効きにくいです。
- そのため、卵がかえるタイミングの7〜10日後にもう一度使うことが重要です。
- 必ず説明書をよく読んで、正しい使い方を守りましょう。
近年、これらのお薬が効きにくい「薬剤抵抗性」を持つシラミもいます。 これは、シラミが遺伝的に薬への抵抗力を持ってしまった状態です。 もし市販薬で効果が見られない場合は、早めに医療機関へご相談ください。 病院では、スピノサド懸濁液などの処方薬で治療することもあります。
物理的な除去と衛生管理
お薬だけに頼らず、卵や成虫を直接取り除くことが治療の重要な柱です。 同時に、再感染を防ぐために身の回りの環境を整える必要もあります。
|
対象 |
対策 |
具体的な方法 |
|
髪の毛・体毛 |
卵を取り除く |
目の細かい専用の櫛(すき櫛)で、髪を丁寧にとかして卵を除去します。 |
|
衣類・寝具・タオル |
熱で駆除する |
・60℃以上のお湯に5分以上つけます。 ・洗濯後に乾燥機で乾かすのも効果的です。 |
|
洗濯できないもの |
密封して駆除 |
帽子やぬいぐるみなどをビニール袋に入れ、2週間密封するとシラミは餓死します。 |
特にコロモジラミは衣類に潜むため、お薬より熱処理が主な治療法です。 また、ケジラミは性的な接触で感染することが多いため、パートナーも同時に検査・治療を受けることが再発予防のために不可欠です。
特に注意したい「まつ毛のケジラミ」の治療
もしケジラミがまつ毛に寄生してしまった場合は、特別な治療が必要です。 目の周りはとてもデリケートなため、自己判断で駆除しようとせず、必ず眼科や皮膚科を受診してください。 治療では、シラミを殺すための局所治療と、卵を専用の器具で物理的に取り除く処置が行われます。













